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ゴールドのロレックスに受け継がれるサンダーバーズ パイロットのレガシー

貴重な裏話があるハーマン・グリフィン大尉の唯一無二のロレックスが今、売りに出されている。

全ての時計は物語の器だ。シンプルな刻印にも、それを明らかにする一つのカギが隠れている。常に裏蓋を読むべきである。

 ヘリテージ・オークションに最近出品されたロレックスのRef.6605を見てみよう。18金無垢製ケースの外径は34mm。古びたマットホワイトダイヤルの6時位置には、サンダーバードを表現したエンブレムがあしらわれている。サンダーバードとは、北米各地の先住アメリカ人部族の口承伝承や文献によって伝えられてきた神鳥のことだ。その鳥は、目から稲妻の光を放ち、翼からも雷光がはじけるという。

 この腕時計を裏返すと、さらに興味深い仕掛けがある。“Herman E. Griffin, The Thunderbirds”の文字が裏蓋に刻み込まれているのだ。

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ハーマン・グリフィン大尉はアメリカ空軍の将校であり、空軍フライトデモンストレーションチーム、サンダーバーズのパイロットだった。彼は1958年から60年まで所属。当時はロレックスが、慣例として各パイロットに腕時計を提供していた。その時計は金無垢製の場合もあり、ダイヤルにはフライトチームのエンブレムがあしらわれていたのだ。こうしたモデルはこれまでにも何度か競売にかけられてきたが、このサンプルが他と違うのは、リファレンス が、クリスティーズ、フィリップス、サザビーズの各オークションでここ数年売られてきたような“ターノグラフ”タイプのRef.6609ではなく、デイトジャストのRef.6606だということだ。

 サンダードのエンブレム付きのリファレンスは、いずれも非常に価値のあるヴィンテージロレックスだが、それには理由がある。それは、ロレックスの腕時計が飛行の限界を超えようとして日々、自らの命を危険にさらしてきた人々によって支持されていた時代の名残だからだ。1956年に創設されたサンダーバーズは、初の超音速戦闘機であるF-100Cスーパーセイバーで空を飛んだ。これにより、メンバーたちは世界初の超音速機デモンストレーションチームとなった。グリフィン大尉もその一人だったのだ。

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47年に、チャック・イエーガーはベルX-1に乗り込んで時速662マイルを記録し、初めて音速を超えたことで一躍、時の人となっていた。それから10年もたたないうちに、サンダーバーズは週次デモンストレーション中に音速の壁を破り、世界中の人々を驚かせた。音速以下のスピードで、この飛行機は互いに10フィートも離れず、ぎりぎりのフォーメンションを組んで編隊飛行した。現在、米空軍サンダーバーズの報告書によると「アメリカの全50州と57の諸外国の計2億8000万人以上が、3500回以上のフライトデモンストレーションでこの赤、白、青のサンダーバーズのジェット機を目にしている」という。

ロレックス サンダーバードと愛称のもとになったフライトデモンストレーションチーム

1950年代初頭、アメリカは、ソニックブーム級の大げさな声明文を載せた新兵募集広告によって、新たに見出した軍事的地位をアピールしようと躍起になっていた。1953年6月1日、サンダーバーズはアリゾナ州ルーク空軍基地で始動し、F-84G サンダージェットとF-84F サンダーストリークに乗り込んで空を飛んだ。このF-84のプラットフォームは、サンダーバードが誕生したのと同じ年に終結した朝鮮戦争での役割を称えられていた。チームの目標は国民の間で米空軍への信頼を醸成し、将来と現在の空軍兵を集め、保持するとともに「国外におけるアメリカのプロフェッショナリズムと友好心を積極的に表明」しつつ、「国外の米空軍構成員たちの士気と団結心を高めること」であった。下の動画の4:00から、グリフィン大尉が仲間のサンダーバーズパイロットと雑談している様子が映っている。

音速の壁を破り、世界各地で国を防衛していた素晴らしい飛行機を一般の人々が最前列で見たのは、これが歴史上初めてのことだった。サンダーバーズは人々の想像力をかきたてる象徴的存在となり、魅惑的なターボジェット音と正確無比な操縦術を体感しようとする群衆を引き寄せた。1956年、サンダーバーズは活動範囲を広げ、グリフィンが操縦した超音速プラットフォームであるF-100スーパーセイバーの出動を支援すべくネリス空軍基地に移った。この新しいジェット戦闘機は、以前のF-84よりもはるかに速く、エンジン音も大きく、より攻撃的なスウェプトウィング(掃射翼)の設計になっていた。