都筑区の牛久保東1丁目にある横浜市交通局建設事務所を、レポーター5人で訪問してきた。わかりやすく言うと、地下鉄グリーンラインの建設を担当している事務所である。グリーンライン開通後の2008(平成20)年4月に、建物は撤退する。

伊佐見所長・鈴木さん・吉本さん・武田さんの4人が、地下鉄工事の概要や、苦労話を率直に話してくださった。その後、川和町379にある車両基地に移動。グリーラインに使われる車両について、金子さんから説明を受けた。3月30日の開業に向けて休日も取れないほど忙しい中、こころよく取材に応じてくださったことに感謝したい。


みなさんに仕事のことを聞いてみた。「鉄道が好きなんです」「鉄道が通ったことで発展した街並みを見ると嬉しくなります」「たくさんのお客さんに乗っていただけるようサービスを考えています」「地図に残る仕事はやりがいがあります」など、4人とも忙しさなどなんのそのという感じ。

こういう方達の情熱に支えられている地下鉄なのだと、改めて開業が待ち遠しくなった。

10駅のうち6駅も都筑区内にある


高速鉄道4号線の愛称であるグリーンラインは、港北区の日吉と緑区の中山13キロメートルを21分で結ぶ新線(左図)である。13キロメートルのうち、地下区間は10.7キロメートル、地上は2.4キロメートル。

横浜には、あざみ野と湘南台を結ぶ地下鉄(ブルーライン)があるので、グリーンラインの開業で2系統の地下鉄が運行する。

グリーンラインには10駅ある。そのうち都筑区には、東山田・北山田・センター北・センター南・都筑ふれあいの丘・川和町の6駅もある。他区の人にしかられそうだが、いわば都筑区民の地下鉄のようなものである。

各駅の外観やプラットフォームは、地域の特性を生かしたデザインや色が使われていて、一目見てどこの駅かわかる。それを見比べるだけでも楽しい。

区内にある6駅のステーションカラーは、東山田が「茶色」、北山田が「だいだい色」、センター北が「ピンク色」、センター南が「空色」、都筑ふれあいの丘は「紫色」、川和が「青色」である。



日本ではトップクラスの安価な地下鉄

総工事費の予算は3000億円だったが、実際は2450億円ですんだ。線路1キロメートルあたり187億円で、今のところ日本ではもっとも安価な地下鉄である。工事費が少なくてすんだのは、新技術・新工法を採用、現場の状況に応じて工事方法を見直すなど、徹底したコスト削減に努めた結果である。

グリーラインに使われる10000形リニアモーター駆動小型車両は、従来の車両に比べ急坂を登る力があり、川和町駅近くの、1000分の58(1000メートルで58メートル登る)という急勾配を登ることが出来る。「ジェットコースターに乗っている気分になりますよ」とのこと。

小型車両なのでトンネルは小さくてすみ、駅も浅いところに作ることができる。トンネルや駅の高さが低いこと、急坂を登る力があることで、工事費が大幅に節約できた。

検修庫の新車両を前にして、技術的な説明をしてもらった。 線路と車輪 線路に布かれたリアクションプレート

リニアモーターというと、山梨の超伝導の浮上式リニアを連想するが、それとは違う。東京の地下鉄「大江戸線」は、リニアモーター方式である。

「今までは、モーターが回転して進んでいました。この車両は、車上側の板状のコイルと、地上側のリアクションプレートの間(右)に磁界が発生して、反発力が生まれます。その反発力で進みます。浮上するわけではないんですよ」という説明だった。

グリーンラインの軌間は、ブルーライン・新幹線・京浜急行と同じ1435ミリメートル。でも車両の推進方式が異なるので、相互乗り入れは出来ない。もともと、横浜の地下鉄は、東京依存から横浜の自立を目指して「横浜環状鉄道」として計画されたので、相互乗り入れは考えていない。あくまで市全体をカバーする鉄道だ。


バリアフリーと透明感のあるインテリア


グリーンラインで使われる車両は60両。訪問した時には、すべての車両が基地に収まっていた。

車体は、神戸の川崎重工業で作られた。神戸から横浜の本牧まで船で、本牧からここまではトレーラーで運ばれてきた。

レポーターも真新しい車両(左)に乗せてもらった。ご覧のように、見るからに明るくて開放的で透明感がある。

連結部の扉や座席の仕切りは透明ガラスが使われ、圧迫感がない。

大きな窓は遮音の工夫がこらされ、紫外線除けのガラスを使っている。地上を走るのはわずか2.4キロメートルだが、紫外線の害から逃れられるのは有り難い。

乗客のことを考えた工夫が、随所に見られる。つり革の高さは2種類あり、背の低い人にも便利だ。プラットフォームと車両の段差は1.5センチ、隙間も6.5センチしかないので、車椅子でも難なく乗車できる。車椅子やベビーカーのスペースも作られ、ベルトで固定できる。車両のステップは、弱色者が判断しやすいように、黄色を使っている。

非常通報装置が、各車両に4ヵ所もついていることも安心感につながる。

車椅子やベビーカーのスペース。ベルトで固定できる。 ドアの入口は、目の弱い人でも判断しやすい黄色を使っている。写真の上部に見える赤い部分は非常用装置。 従来の車両は、運転席が左側にあるが、新車両は右側にある。車掌の業務を兼務するワンマン運転を前提にしているため。


 見学者は約5万人

グリーラインの工事が始まった平成13(2001)年からの見学者は、およそ5万人。月に平均8回も見学会が行われた。近隣の町内会・他の市町村・小学生の団体・鉄道愛好会など、さまざまな人達が訪れている。

なかには、用地買収に応じようとしない人や、大金を投じての地下鉄は必要だろうか、建設を止めろという意見があったと聞いている。そうした市民や沿線住民の理解を得るために、きめ細やかな対応をしてきたが、そのひとつが見学会だった。積極的に情報公開をしようという関係者の熱意を感じる。

鉄道愛好会の人達からは、「リニアモーターのコイルの巻数は何本ですか」など細かい質問が出たそうだ。「私はコイルの数など知りませんが、車両課の担当者が丁寧に答えていましたよ。みなさん大満足なさったようです」と、所長が笑いながら話してくれた。

この訪問前の1月下旬に、北山田町内会向けの見学会に行ってきた。土曜にもかかわらず、大勢の職員が説明や誘導にあたっていた。地下鉄が通ることを心待ちにしていたお年寄りや、家族連れなどで引きも切らずの状態。地元のお年寄りが若い頃は、自分たちの田畑が広がっていた。そこに鉄道が通るのは、どんな気持ちなのだろうか。

むき出しのエスカレーターや改札口など、完成したら絶対に見ることが出来ない内部構造がわかり、面白い見学会だった。

立て看板も用意されていた。 開通を待ちわびる大勢の見学者が訪れた。 北山田駅のシンボルカラーの「だいだい色」が各所に使われている。


開業カウントダウン

3月30日の開業は目前だ。開業に先だって、29日の13時から16時に試乗会が行われる。往復葉書で応募して抽選にあたった5000名が、試乗できる。詳細は交通局のHPで確認して欲しい。

その他に各駅で開業イベントが計画されている。イベント情報は逐一更新しているので、やはりHPで。
都筑区の駅で、現在予定されているイベントは

3.23(日)
「進め!!グリーンラインonステージ」
主催・会場:センター北駅のノースポートモール5階 都筑多文化・青少年交流プラザ

3.29(土)
港北ニュータウン中川同志会40周年イベント(同時開催、4号線北山田駅開通記念イベントと桜まつり
テーマ「ふるさとへ」〜みんなのふるさと、港北ニュータウン

○3.29(土)
「G30フェスタ」 G30クイズとミニ電車(Nゲージ)運行
主催:都筑区資源循環局都筑工場
会場:都筑ふれあいの丘駅前広場

3.30(日)
川和町駅開業記念祝賀「川和ドリームフェスタ」
主催:川和町駅開業祝賀実行委員会
会場:川和町駅高架下ほか。会場へは、グリーライン利用が便利。

「進め!!グリーラインonステージ」を開催するセンター北駅 「北山田駅開通記念イベントと桜まつり」を開催する北山田駅イラスト 「G30フェスタ」を開催する都筑ふれあいの丘駅完成予想図 「川和ドリームフェスタ」を開催する川和駅構内イラスト

                                         (2008年1月・2月訪問 HARUKO記)

他のレポーターの感想へ
地域の企業・施設訪問のトップページへ
つづき交流ステーションのトップページへ
ご意見や感想をお寄せ下さい