2回目の企業訪問は、都筑区早渕にある資生堂リサーチセンター(右)である。リサーチセンターは、金沢八景にもあるので、区別するために、ここの研究所は、(新横浜)とカッコがつく。

新横浜駅に近い高台にあった研究所が手狭になったので、2000年11月に都筑区に移転してきた。

私たちレポーター7名が、約束の10時に着いたときには、すでに広報担当の内藤さんが玄関の前で待っていてくれた。
その後、2時間余をかけて、センター内部を案内してくださった。
応接室のスクリーンには、上のような画面が映し出され、ひとりひとりの名札も、テーブルの上に置いてあった。心遣いに感激しつつも、「見学者」という胸章を渡され、注意事項の説明を受けると、少々緊張感が走る。


資生堂は、化粧品部門で言うと、国内1位、世界4位のシェアを誇る。創業は1872年(明治5年)。133年間の長きにわたって、日本の化粧品業界のリーダー格を担ってきた。

約25,000名の社員のうち、700名ほどが研究開発に携わっている。このリサーチセンターで働いているのは、約500名。

見かけた社員のほとんどが白衣を着ていて、理系大学の研究室の雰囲気だ。

研究室には入れないので、2階から玄関ホール(左)を写真に収めた。この写真から内部の雰囲気を感じ取っていただけるだろうか?

リサーチセンターの研究の4大目標は、「美白」「UV防御」「育毛」「抗老化」だという。皮膚の構造と機能の解明のためには、特に力を入れていて、ハーバード皮膚科学研究所が15年ほど前に、ボストンに設立された。資生堂・マサチューセッツ病院・ハーバード医科大学3者の共同研究施設である。

女性にとってシワは大敵だ。皮膚のメカニズムが解明されて、少しでも老化を遅らせることが出来たら、こんなに嬉しいことはない。シワが出来ない化粧品の出現は、女性ばかりか男性にも喜ばれるはずだ。毛生え薬を待ち望んでいる殿方も大勢いる。夢を与える研究開発に日夜励んでいる社員が、まぶしく見えた。



研究に疲れた時にリラックス出来る場が、所内のあちこちに設けられている。「実際は、みな忙しくて、ぼんやりくつろいでいる人は、ほとんどいないんですよ」と、内藤さんはおっしゃっていたが、「憩いの場」は、この研究所の「お宝」と言える。

中でも、大きなガラス越しに庭が見える部屋(下)は、まるで森の山小屋にいるようだ。緑を見ているだけで、心が落ち着く。16種類の樹木が植えてあるという。



 廊下の壁にも、さりげなく絵が飾ってあるが、いちばん興味を引いた芸術品は、「氣と遊ぶ」と名付けられた男女の像(右)である。

男性像には引き出しがあり、71種類の漢方の生薬が入っている。アクリル・LEDなどの新素材と、古くからある漢方薬の組み合わせが面白い。

資生堂の研究所は、アメリカやフランスにもあるが、2002年には、中国の北京にも作られた。



ここはデュポン社の社屋だったが、買い取って、大がかりな増改築をした。
その際に、環境保全に配慮しようとの方針があったので、環境への配慮は、随所に見られる。

屋上の緑化は本格的だ。草ばかりか大きな樹木も育っている。省エネ型空調システムも採用している。深夜電力で氷を作り、昼に冷房として使うのだ。トイレの水は、雨水を利用している。

太陽光発電(上)も使っているが、事業所すべての電力はまかないきれない。2部屋の電気が、この発電でまかなっているに過ぎないが、地球に優しいという意味では、一歩前進だと思う。
太陽光発電は設備費がかかるので、経済的には、今のところマイナスである。同じことが、ガラスビンのリサイクルにも言える。全国の店からの輸送費や人件費を考えると、新しくビンを作った方が、コストがかからない。

利益追求だけでは、やっていけない時代になったとはいえ、資生堂リサーチセンターの環境保全にかける意気込みが、伝わってきた。これも立派な「お宝」だ。
化粧品ビンのリサイクルは、2001年から全国規模で展開している。
左の図は、リサイクルシステムの流れを説明したもの。資生堂冊子からお借りした。

簡単に言うと、使用済み容器を直営店などで集め、掛川の工場でガレット(ガラスくず)にする。そのガレットが、ガラス工場で再び、化粧ビンに生まれ変わる。



リサイクルの例を、もうひとつ挙げねばならない。食堂を中心に、1日に50sの生ゴミが出るが、生ゴミ処理機(500万円)を使うと、50sが15sに減る。それに枯れ葉をまぜて、肥料(左)を作っている。化学物質を一切使っていない肥料だ。

「欲しい方にはいくらでも差し上げます」と内藤さんがおっしゃったので、もらってきた。10倍の土に混ぜて使うと、良い状態の土にになるらしい。今年の夏野菜や花の成長が楽しみだ。

この肥料が欲しい方には、無料でくださるという話だ。リサーチセンターに連絡してみたらどうだろうか。

さらに、良いお知らせがある。リサーチセンターは、見学を受け入れている。研究施設なので、見学場所は限られるが、VTRも充実しているし、広い所内や庭を見るだけでも楽しい。希望があれば、たとえば紫外線の害や防ぐ方法などのレクチャーも聴くことができる。もちろん事前の予約が必要だ。


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