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カルティエ タンク マスト カラフルな2021年新作モデルを実機レビュー 

レッド、ブルー、そしてグリーンまで。なんということだ。

スイスの優良時計ブランドが、クォーツ危機の最中で生まれた時計にオマージュを捧げる時代が到来している。カルティエのようなプレステージブランドが生き残りをかけて戦っていた時代に、彼らを救うことができたのは…バッテリーだったという話である。ロレックスがもしオイスタークォーツをこの時代に発売するとしたらと想像して欲しい。実現しないとは言わないが、かなりワイルドだ。いずれにせよ、カルティエは4月にWatches & Wonders 2021に登場した数々の時計たちのなかでも、最も色鮮やかな作品を発表した際にこのやり方を採用した。そう、カラフルな「タンク マスト」の新コレクションである。

 バーガンディ、ブルー、グリーンのタンクは、今年(そして現在でも)最も話題になった時計のひとつだ。考えてみて欲しい。3本のステンレススティール製のクォーツウォッチが、時計界に旋風を巻き起こしたのだ。きっとそれがカルティエの魔法なのだろう。タンクは、1世紀以上にわたる時計製造の発展を支えた象徴的なデザインの時計である。時計の世界が変化しても、タンクはそれに耐え適応してきた。その証拠に、オリジナルのマスト ドゥ カルティエラインは、カルティエに親しみやすさと楽しさを、それが最も必要とされた時代に取り入れた時計なのである。

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クォーツ危機(立場によってはクォーツ革命)が時計界を襲い、多くの老舗時計ブランドが休眠していくなか、カルティエは「勝てないなら仲間になれ」という攻勢をかけた。当時、カルティエの新オーナーは、タンクが事態を好転させる手段であると考えていた。その結果として生まれたのがヴェルメイユケースを備えたタンクであり、別名マスト ドゥ カルティエと呼ばれる、金メッキを施したシルバーケースにカラーダイヤルをもるミニマルなコレクションだった。クォーツムーブメントを搭載し、価格は当時500ドル程度だったが、このコレクションはヒットした。言うまでもなく、そのスタイリングとカラフルさは、80年代という派手な時代に完璧にマッチしていた。今回の タンク マストは、そんな80年代のモデルに敬意を表したものだ。

 カラフルな新コレクションタンク マストを実際に見て最初に気付いたのは、文字盤がいかにミニマルであるかということ。マーカーが一切ないため、時間を知るための基準点がない。

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機能的には厳しい。でも、それがさほど苦にならない理由のひとつが、実はクォーツムーブメントであることだ。一度だけセットすれば、あとは心配がいらない(もちろん電池が切れるまで)。

 歴史的に見て、マスト ドゥ カルティエのライン、そしてこの新しいタンク マスト ウォッチの興味深い点は、同メゾンのエントリークラスの価格帯であるということだ。私はこの言葉が好きではなかったが、今回の文脈では有効だ。去年発売されたカラフルなロレックスのオイスターパーペチュアルを見て欲しい。かつてはブランドのエントリークラスだったものが、今ではレブロン・ジェームズ氏などが着用する最も人気のあるモデルのひとつとなっている。彼はサンゴ色のオイスターパーペチュアルに合わせて、ワインレッドのタンク マストを購入するだろうか? 本機の33.7mmというサイズは、彼の巨大な腕には小さすぎるかもしれない。しかしある意味、それがよりクールなのかも。

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これらの文字盤の色は、日中の光の下では人目を引くような豊かな色彩となり、必ず注目を集めるだろう。また、暗い場所では落ち着いたエレガンスを感じさせてくれる。これらのバランスが、どんな状況でもこの時計を魅力的に見せている。

 ケースの形状やデザインは、まさにタンクと呼ぶにふさわしいものだ。カラフルな文字盤には、オリジナルのマスト ドゥ カルティエのようにゴールドプレートのケースが似合いそうだが、今回はラインナップされない。その代わりすべてSS製であるため、31万7900円の価格を実現できたのだ(税込予価)。

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ラージサイズ(現代の基準ではまだ小さいが)とは、長さ33.7mm、幅25mmのケースだ。ひとつ言えるのは、このケースは羽のように軽いということ。その結果、非常に快適な装着感が得られ、本当に時計をしているかどうか、いつもより多く手首を確認してしまうほどだ。装着の楽しみは、バーガンディ、ブルー、グリーンの3色のストラップとのマッチングにある。個人的にはブルーに惹かれたが、バーガンディも捨てがたかった。グリーンは3位ということになるが、誰が順位を気にするだろうか? 私だけだろう。

 ただ、文字盤が少しミニマルすぎるとは思う。旧モデルの "Must de "の印字には何かしっくりくるものがあったが、このモデルにもあればぴったりだったろう。また、分針の長さも気になった。必要以上に短く感じられ、時間を知るという行為をさらに難解にしている。あらさがしの最後を挙げると、マスト ドゥ カルティエという名前は特別な感じがするが、タンク マストは不完全な文章のように聞こえてしまう。

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全体としては、今回のモデルはカルティエの時計をより楽しくするという目的を果たしていると感じた。そのためにアイコニックな "タンク"を採用したことも評価できる。これは、モデルとブランドの両方が進化し、適応していることを示した新たな実例である。このモデルを身に着けている自分の姿をすぐにイメージできるが、1色に決められるかは自信がない。このまま3つとも揃えるというのはおかしいだろうか?

タンク マスト。ケースサイズ:ラージ - 縦33.7mm×横25mm。サファイアクリスタル。ムーブメントはクォーツ。SS製ケース、ブルーの合成スピネルのカボションがセットされたリューズ。バーガンディ、ブルー、グリーンの3色のラッカー仕上げダイヤル。同色のアリゲーターレザーストラップ。 価格: 31万7900円(税込予価、9月発売予定)。