都筑図書館を2人で訪問してきた。図書館は、総合庁舎1階、足を運びやすくしかも目立つ場所にある。図書館を知らない人などいないだろうから、あえて訪問するまでもないと思っていた。

しかし、今年2010年4月25日、都筑区15年に遅れること半年で開館15周年を迎えた。都筑図書館独自のキャラクター・ネコのみゃーごとネズミのちゅーずも決まったばかりだ。

15周年誕生祭のイベントも、たくさんある。 そのうえ、今年は国民読書年。こんなホットな場所を訪問しないわけにはいかないと、お邪魔してきた。

簡単に終わると思っていたインタビューは、いつものごとく、2時間を超えてしまったが、館長の鈴木昭久さんと司書の鈴木裕美子さんが、気持ちよく応対してくださった。


  ”知りたい”をサポートします!

数十年前の図書館といえば、公共のはもちろん学校のでさえ、厳めしい雰囲気がただよっていた。実際に、暗くてカビくさい所が多かった。

最近の図書館は様変わりである。開館時間の9時半少し前に行ってみて、2つのことに驚いた。1つはたくさんの人が早くから並んで待っていること。もう1つは、館長みずから開館時に入館者を迎えていることだ(左)。その光景はデパートの開館時とよく似ている。「いらっしゃいませ図書館へ」という姿勢に、今の図書館が見える気がした。

しかも、「区民の皆さんの”知りたい”を、都筑図書館がサポートします」と、区の広報誌でPRしている。館長も司書の鈴木さんも「知りたい事や、悩みがあれば、まず図書館に足を運んで欲しい。問題解決の糸口がきっと見つかります」と強調していた。

区民の要望に全力で応えたいという気持ちはよく伝わってくる。私は2回ほど相談したことがあるが、その時の真摯な対応に感激した。でも忙しい司書に迷惑をかけるような気がして、その後は自分で探すようにしている。

その話をしたところ「どうぞ遠慮しないで使ってください。利用者の相談に乗ることも、司書の大事な仕事なんです」という言葉が返ってきた。

”知りたい”をサポートしてくれる職員は、館長・庶務各1名、司書11名、嘱託員3名、アシスタント5名から12名。司書が11名もいることに、少し安心した。これなら気軽に相談しやすい。


  登録者数も予約冊数も飛躍的に伸びた

都筑図書館利用者は、この15年間で飛躍的に伸びている。人口がほぼ2倍になったので、伸びるのは当たり前と思うかもしれないが、登録者数と予約数の伸び率はそれ以上だ。

下は、開館した平成7年度と平成20年度の統計(都筑図書館提供)から独自に制作したグラフ。登録者数は約5倍、予約冊数は約8倍になっている。

登録者は、16,482人から84,694人と、約5倍になった。 予約冊数は35,193冊から285,547冊と、約8倍になった。

登録者は、他区の図書館に比べると非常に多い。「もともと、横浜北部は、図書館を利用する人が多いんです。駐車場が完備されていることもあって他区の方も登録していますし、駅から近いのでビジネスマンが通勤帰りに寄ることもあります」の説明があった。

登録者の内訳は高校生以上が62,966人、中学生以下が21,789人。中学生以下の割合が他区に比べ多いのは、0歳から14歳人口が横浜市のトップということを反映している。「この周辺のお父さんは子育てに参加している場合が多いようですよ。ファミリーで借りにくる姿をよくみます」と、館長は話している。

予約冊数が8倍も増えたのは、予約方法が簡単になったことも大きいと思う。今は、ネットで予約する人が74%、窓口での予約は12%、館内利用者用検索器での予約が13%。平成7年度は、図書館に足を運ばなければならなかったが、今は自宅に居ながらにして予約出来る。便利な時代になったものだ。

予約本は、市内18区の図書館ばかりでなく、県立図書館からも融通しあっている。折りコン(折りたたみコンテナ)を積んだ2トン車が、5コースに分かれて走り回っている。基本的には、午前便で各館から他の館あての荷物を回収し、午後便で各館に配送している。

このように物流コストもかかっているし、予約待ちも多い。予約を取り消す場合は、連絡して欲しいそうだ。


もっと図書館が欲しい

横浜全館の蔵書数は約380万冊、市民ひとりあたり1冊にすぎない。図書費の予算もひとりあたり52円ぐらい。政令都市の平均は約100円、東京都市部は約200円。横浜が全国最低レベルだということがよく分かる。

都筑図書館の蔵書数は約16万冊
で、1人に1冊もない。図書館の数も、20万の人口にわずか1館。せめて他に1館は欲しい。左写真は図書館内部。この日も椅子は全部ふさがっていた。しかし、書棚には空きがあった。

館長に、これらの不満をぶつけてみた。

図書費の予算は、平成14年の3.7億円に比べると、今は半減しています。絵本の読み聞かせなどをしていると、本には人を育む力があることが良く分かります。本ひいては図書館の大切さをもっとアピールしなければと思っています。職員はみな一生懸命やっていますが、もっと工夫する必要があります」。館長や職員にこの意気込みがあれば、これ以上予算が削減されることはないかもしれない。

ちなみに、蔵書数についても、平成7年度と平成20年度を比較した統計がある。蔵書数は69,940冊が158,225冊と約2倍に増えている。

予約数が8倍に増えているのに、蔵書数は2倍。予約してから手に入るまでに1年以上かかる場合があるが、その理由が分かった。いくら横浜市全館で融通しあっているとはいえ、全体のパイが少ないからどうしようもない。せめて、返却期限を守る、借りた本に落書きをしないなどのマナーを守り、本を大事にしたい

蔵書数の話のついでに、本を購入する基準を聞いてみた。「各図書館の職員が中央図書館に週に1度集まって、全体で話し合います。リクエストが多いことや、書評も参考にしています」。欲しい本があったら、リクエストしてみたらどうだろう。


     決まったばかりのキャラクター・みゃーごとちゅーず

15周年記念で誕生した図書館のキャラクターは、「みゃーご」と「ちゅーず」(左)である。

4人の職員が描いたクマ・ゾウ・ネコ・ネズミ・お化け・本と栞などのキャラクターイラストから、区民に選んでもらった。1月から3月に投票箱をおいたところ、投票総数は8396票にものぼった。

ネコのみゃーごは、都筑区の都(みやこ)、カーゴ(貨物)、ネコの鳴き声からつけられた。お腹に本がつまっているブックトラックネコ。

ネズミのちゅーずは、本を選ぶ(choose)とネズミの鳴き声からつけられた。都筑図書館の本のことならなんでも分かる司書ネズミ。

図書館職員の主業務は、本の貸し出しや相談につきるんだろうなと、訪問する前には漠然と思っていた。しかし、キャラクター考案などは仕事のほんの一部であって、やっていることはたくさんある。その一部をご紹介する。

○乳幼児向け
 ・おはなし会(2・3歳児と保護者に月に1回)
 ・福祉保健センター・4ヶ月検診時におはなし会
 ・「はじめてであう絵本コーナー」(左)設置

○児童と学校向け
 ・おはなし会(ひとりでおはなしが聞ける子に月に1回)
 ・小中高生徒の図書館見学受け入れ、出張ブックトーク、教職員
   の研修にも出張

○ティーンズ向け
 ・平成15年にティーンズコーナー設置(左下)
 ・平成17年にティーンズボードを設置(職員のコメントが大好評)

○地域の市民グループとボランティアグループと教職員向け
 ・グループ貸出(この本を使っての読み聞かせボランティアが増加)
 ・利用登録をした教職員に、1ヶ月に30〜40冊の貸出
 ・学校図書館活性化推進校(荏田南小・中川西小・山田小・川和東小・荏田南中)への支援

○障害者向け
 ・視覚障害者に対面朗読
 ・朗読ボランティアの手配や希望図書の確保

○自主企画事業 
 ・郷土史講座・郷土資料展示
 ・図書のテーマ展示
 ・夏休み小学生向けイベント(1日図書館員・ブックトーク・調べ学習
   おはなし会など。ブックトークは、テーマに合わせて選んだ
    
4〜5冊の本を紹介する催し)


  つづき図書館ファン倶楽部

都筑図書館には、「つづき図書館ファン倶楽部」という強力な味方がついている。交流ステーションの地域活動紹介のコーナーで取り上げているので詳しい説明は省くが、区政5周年で開かれたシンポジウムの時に、サポーターとして参加した人たちの有志で結成した。

市民を育てるのも図書館だが図書館を育てるのも市民」の思いから、月1回の定例会を持ち、図書館を応援し続けている。最近では、15周年の記念イベントの「アイアイ・デコデコ対談」やキャラクター決定にも関わった。

誕生祭に展示するパネルづくりの場にお邪魔したが、みなさんイキイキと楽しそうだった。話の端々から「図書館をもっと良いものに!忙しい職員を助けたい!」というメンバーの熱気を感じた。

ファン倶楽部独自の活動も、区内の図書施設(コミュニティハウスなど)マップ作り、「子どもと本」の出版、市長とのミーティング、つづき人交流フェスタに参加、国立図書館見学など活発である。

なかでもA3サイズ裏表の「つづき図書館ファン倶楽部通信」−最新号は31号−(左)は、中味が濃い。

司書やファン倶楽部のメンバーがすすめる本の紹介・図書館だより・他の図書館訪問記・作家さん訪問記など盛りだくさん。図書館の「つづき図書館ファン倶楽部コーナー」に置いてあるので、ぜひ読んで欲しい。

図書館は単に本を借りるところと、勝手に思いこんでいた私は、図書館が置かれている現状や、職員やボランティアの熱心さに目が開かれた思いだった。電子書籍の登場などで本を取り巻く環境は激変しそうな気がするが、こんな時だけに、図書館の重要性を再認識したい。(2010年5月訪問 HARUKO記)

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