都筑をガイドする会」の会長・大橋政信さん(64歳)に会ってきた。

都筑ををガイドする会(以下、ガイドする会と記す)の月1回の定例会は、毎月第1土曜日に、区民活動センターで開かれる。

会議の様子を見学後、引き続きインタビューすることになった。

パンをちょっとかじるぐらいで、ゆっくり昼食をとる時間がなかったが、「僕は平気です」と言う大橋さんのご厚意に甘えた。

ガイドする会の熱気にも圧倒されたが、大橋さんの現役時代のエピソードが非常に面白く、話が尽きることがなかった。

いつものように長時間の取材になってしまい、申し訳ない。




2008年12月に設立 


ガイドする会は、2008年12月に設立。4年しか経ってないので、都筑区に数ある団体の中では新しい。区役所主催の「都筑ガイドボランティア講座」の受講生が中心になり作った。

今は会員が28名。会員のほとんどが60〜70代とやや高齢だが、その活気たるやすごい。「来年度の計画」を4グループで話し合っていたが、みんなが話の輪の中にいた(左)。小グループに分かれると、全員が話しやすくなる利点がある。

設立当時の会長・田中良三さんは、まだ仕事をしているということでバトンタッチ。2012年度から、大橋さんが会長である。

「越してきたばかりの新参者でいいんですかと、会長を引き受けるときに言ったんですよ」と大橋さん。北海道の札幌から都筑区に越してきたのは2009年。たしかに新参者ではある。

「どうして縁もゆかりもないここにいらしたんですか」

「娘2人とも首都圏に住んでいるんです。仕事を終えたこともあって、娘や孫たちの側に越してこようかなと軽い気持ちでした。不動産屋の勧めで決めた時には、都筑に15キロメートルもの緑道がある、羽田や成田行きの直行バスがある、地下鉄も通っている・・など知らなかったんですよ」

「むしろ、何も知らなかったからこそ、新鮮な目で見れるんです。都筑のことを好きになるために、なんでも調べてやろうという意欲が沸いてきたんです」

その意欲の成果は、大橋さんの頭の中にびっしり詰まっている。史料を読むのはもちろん、専門家に話を聞いたり実地に歩き回っていることもあって、住民歴は浅いのに、史実も小さな道もよく知っている。


ガイドと共につづきを歩こう 


ガイドする会は、一般の方を対象とした「ガイドと共につづきを歩こう」を、年に数回主催している。去年の12月で12回目になった。12回の中には、重複している場所もあるが、まったく同じコースということはない。

12回全部を掲載するスペースがないので、一部を紹介する。


茅ヶ崎城址公園の入り口 
下のコース参照

真照寺 
下のコース参照
 
山田神社
下のコース参照


○ 仲町台駅→せせらぎ公園→関家住宅→寿福寺→正覚寺→茅ヶ崎城址公園→民家園→大塚歳勝土遺跡→センター北駅(6回目)

○ 仲町台駅→折本農業専用地区→真照寺→鬼塚台(三角点)→長王寺→福聚院→阿弥陀堂→ららぽーと横浜(10回目)

○ センター北駅→十二支の石→徳生公園→神無公園→山田富士→ふじやとの道→長泉寺→旧中原街道→山田神社→南堀貝塚→大善寺→センター北駅(12回目)

この中でも関家住宅は、特に人気がある。江戸時代の代官屋敷だが、今も22代当主がお住まいなので普段は非公開。ガイドする会には、1年に1度、内部まで見せてくれる。交流ステーションでも関家大塚歳勝土遺跡を訪問しているので、ご覧いただきたい。

ガイドの会のHPやチラシで公募しているが、いつも100名弱の参加者がある。参加費は保険代もふくめわずか300円。詳しい資料をもらえるので、参加しなきゃ損だという気分になってくる。

13回目は、3月に「江川のせせらぎ緑道」を予定している。「みなさんの参加をお待ちしています」と大橋さんからメッセージがあった。

100名もいると、説明も聞こえないではないかと心配するかもしれない。でも、ガイドする会の会員3人(オレンジ色の帽子)と参加者15名以内が1グループで行動する(左)ので、心配無用。

コースが決まると、まず大橋さんが2回ぐらい下見をする。次に会員を案内しながら同じコースを歩く。更に会員は班ごとに自主的に回る。こんなにも念入りな下見をしていることに、驚いた。

「仲間内で歩くなら少々道を間違えてもいいのですが、ガイドはルートも名所の説明もきちんと頭に入れておかなければなりません。ガイディングのスタイルも勉強していますよ。みんな真面目なんです」と強調した。


ガイドのプロ 


「コースを作るには、コツがあるんですよ。どういう順序で回ったらいいか、いちばんアピールしたいスポットは何かをよく考えます。当日お渡しする資料も作ります」と、大橋さんが熱を込めて話し出した。

「まるでガイドのプロみたいですね」

「実は旅行会社に勤めていました。だからコースづくりやガイドには慣れているんです。1972年の入社当時は、海外旅行者は年間139万人、それが今や1700万人を軽く超えています。旅行業界も様変わりです。入社した頃は、自分で旅のルートを考えて、お客さまを案内することが当たり前でした。お客さまの声が直接耳に届き、やりがいがありました」

「その中でも、思い出に残っていることを聞かせてください」

「1993年から3年間、上海事務所長をしていました。経済視察団や要人の送迎、中国人ガイドに日本人の気質を教えるなど、やる事はたくさんありました。彼らに『そのうち君たちが中国人を連れて日本にくることがあるよ』と励ましましたが、今はそれが当たり前になっています」

当時の思い出を綴った個人のHP「懐かしの上海」は、今とはまったく違う上海を生き生きと描写している。

「そうそう、札幌の支店にいた時に、障害者向けの海外ツアーを何回か企画しました。車椅子の方も、全盲の方も楽しんでくださいました。障害者ツアーは航空会社との折衝など難関がありましたが、参加者の笑顔を見ると、苦労とは思わなかったですね」

上の写真は、社員研修で話をしている40代前半の大橋さん。


ガイドの範囲を広げて! 


大橋さんは、通訳ガイド(英語)の資格を持っている。神奈川県01459号だ。都筑に越してきてすぐの2010年に取得。政府が”Visit Japan”のキャンペーンをしていることもあり、大橋さんの本領発揮の場は広がるに違いない。

なんせ旅行会社に30年。海外経験も豊富なので、外国人の好みも知っている。ドライブもお手のもの。左写真は、アメリカ大陸横断ドライブを達成した時の写真。西海岸のサンタモニカを出発し、東海岸のマイアミに到着したのは、23日後だった。アメリカ以外にもイギリス縦断や日本各地をドライブしている。

こんな風に、大橋さんがカバーしてる場所は都筑に限らない。よその地を見ると、自分が住んでいる所がよく分かると言われる。

都筑区に限定せず、8世紀の万葉集にも登場する都筑郡(現在の都筑・青葉・緑区など)にまで広げてもらいたい。次は横浜全体にも目を向けてもらいたい。そうすることで、都筑がもっとよく見えるだろう。勝手なことをお願いして、インタビューを終えた。

                                             (2013年1月訪問 HARUKO記)
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