新しいプロジェクトとして「つづき”ひと”訪問」を連載することになった。「トップバッターは誰がいいだろう」「区長以外にない」ということで、1回目の訪問は、9代目の都筑区長・吉田哲夫さん(左)。

都筑区制15周年なのに、私は歴代区長の名前を1人も知らないし、写真で拝見したこともない。

こんな私に区長訪問が務まるかと、おそるおそるお会いしてみると、写真のように笑顔がステキな親しみやすい方だった。そのうえ若々しい。とても59歳には見えない。

「恥ずかしながら今日まで区長の顔を知りませんでした」「いやあ〜知られていない方が気が楽ですよ」。ぶしつけな一言で始まったインタビューだったが、冗談で笑い飛ばしてくださった。



  市が持っている機能を反映するのが区役所

「区役所と市役所の仕事の違いはなんですか」と聞いたところ、「市が持っている機能を反映するのが、区役所です。区役所は総合行政なんです」と明快な答えが返ってきた。40年近く横浜市民でいながら、私は1度も市役所に行ったことがない。一般市民は、区役所で全部用が足りる理由がよく分かった。

市の機能を反映させるばかりではない。18区それぞれの特徴をいかして、区が独自に予算案を提出できる額が約1億円あるという。区民1人あたりにすると約500円にすぎないが、使い方によっては、都筑の独自色を出せると思う。


    町内会への加入率を上げたい!

区長室は、5階の地域振興課・区政推進課・総務課があるフロア奥にある。部屋のドアはいつも開けてあり、厳めしいというよりフレンドリーな雰囲気だ(左)。

吉田区長がこの部屋の住人になったのは、今年2009年の4月。「就任して半年になりますが、都筑区独自の予算を使って重点的に取り組みたいことはありますか」。

「区の行政は、継続が大事です。前区長は子育て支援が重点でした。これも継続していきますが、あらたに、町内会への加入率を上げることなどに予算を使いたいのです」。

都筑区の町内会への加入率は、18区中最低の64%。「永住しようとは思わない」「近所との付き合いが面倒だ」と思っている区民もかなりいるだろう。その人たちが、町内会に関わりたくない気持ちもわかる。

しかし、災害や犯罪のない街作り、いざという時に助け合える社会を目指すには、住民の連携が不可欠だ。加入率を高めたいという区長の方針が、前進することを祈りたい。


   駅から区役所まで信号も横断歩道もないのは都筑区だけ   

「都筑区にどんな印象をお持ちですか」のありきたりの質問に「ひとことで言うと、穏やかな区。また、駅から役所に行くのに、信号も横断歩道もないのは都筑区だけですよ。他の区では考えられません」の嬉しい答えが返ってきた。

区長に言われるまで気づかなかったが、たしかに「センター南駅」から区役所までの道は、車の往来がなく、安心して歩くことが出来る。左写真は区役所から駅へ向かう歩道。乳母車も車いすも杖をついている人も、のんびり通っている。

緑が多いことも気に入っています。でも緑地は年々減っているんです。農地や山林のほとんどは個人が所有していますが、彼らがそれを売って宅地や大きなビルにしたいと言えば、防ぎようがないのです。緑地を守るには、横浜市がその土地を買いとればいいわけです。その財源確保のために、前職で横浜みどり税の制度を新しく作りました」と、緑地確保の必要性を熱く語り出した。

区長になる前は、環境創造局で自然保護に努めてきた。それだけに、民間所有の緑地が減っていくことを黙って見ているわけにはいかなかったという。

「緑が多くて住みよい区ですねえ」に終わらず、次なるステップの話を聞けたことは、思わぬ収穫だった。地主の気持ちひとつで緑地が減ってしまうなど考えたこともなかった。先手を打っての「みどり税」も仕方がないような気がしてきた。


     土日もほとんど休めない

「休日はどのようにお過ごしですか」の質問には「旅が好きですが、今はまとまった休みがとれません。土日もほとんど休めないので、映画を月に1〜2度ぐらいですね」とのこと。

土日は、町内会の運動会・敬老会・グランドゴルフ大会など地域の行事に出席することが多い。特に今年は、横浜開港150周年・都筑区制15周年のイベントもあり、区長が顔を出さねばならない行事が目白押しだ。

11月3日の15回区民まつりの開会式で、テープカットをしている区長(左)。テープカットが終わったあとも、センター南とセンター北の両会場を、まわっていらした。

4月に就任後に、8月の市長選挙・衆議院議員総選挙、10月の参議院議員補欠選挙と、2度も大きな選挙があった。選挙は役所あげての仕事になることをはじめて知った。区内には31ヵ所の投票所があるが、区長は投票所の見回りや、開票の立会にも携わらなければならない。

このように、区長の仕事は多岐に渡っていて年がら年中忙しい。忙しい中でも、職員を信頼して温かいまなざしを向けていることを、言葉の端々から感じた。区民にも同じようなまなざしを向けていることを確信して区長室を後にした。


    つぎは中川小学校和泉校長

「つづき”ひと”訪問」は、リレー訪問を考えている。レポーターが訪問者を探す場合は、どうしても偏ってしまう。取材した方に、次の訪問者を推薦してもらえば、いろいろな分野の”ひと”にお会いするチャンスが広がる。区民はそろそろ20万人。たくさんの”ひと”に会って、紹介できたらいいなと思っている。

吉田区長が推薦してくれたのは、中川小学校の和泉校長。和泉先生が中区の間門小学校勤務の時に、本牧市民公園の「とんぼ池」を一緒に作った仲だという。詳細は”ひと”訪問2回をお楽しみに。

                                            (2009年10月訪問 HARUKO記)

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