パン工房「June Berry」の店長・桑原崇さんに紹介されて、伊藤一敏さん(34)を訪問してきた。

伊藤さん(左)は、都筑区荏田東にある中華料理「ダブルハピネスダイニング」のオーナーシェフである。

店はボードウオークガーデンと名付けられた一画の角地にあり、区役所から徒歩2分、地下鉄「センター南」からも徒歩8分。

パン工房の桑原さん夫妻がたびたび通っているうちに、仲がよくなったという。お客さんに美味しい食べ物を食べてもらいたいという追求心が、桑原さんも伊藤さんも半端ではない。

年齢も近いし、食べ物にかける情熱が2人を近づけたのではないかと、勝手に想像している。

今やコラボ商品を作る仲だ。伊藤さん手作りの餃子を中に入れた「ぎょうざドッグ」をJune berryで販売している。(残念ながら1日に20〜25個、しかも水木限定)。


   アメリカのロスで店長をしていた

伊藤さんには、高校生の頃から「将来は外食産業を立ち上げたい」という思いがあった。大学入試に失敗して浪人している時に、「みんなと同じような道を進むのは嫌だな」と思い、大学進学をやめた。

「オヤジはキャリアタイプのエリートサラリーマンだったので、当時はずいぶん反対されましたよ。調理の専門学校に行きだした頃から、本気度が分かってくれたようです。前向きな姿勢を否定をする両親ではありませんから。もちろん今は応援してくれます」と語る。

まずはアンティークの家具屋に就職。このときに養った良いモノを見る目が、自分の店を持つようになった今、非常に役に立っている。

貯めたお金で調理の専門学校に入校。日本で唯一の朝鮮料理(韓国料理ではない)も教える学校。北朝鮮朝鮮出身の人が経営者だったこともあって、南北朝鮮の確執などさまざまな人生勉強もさせてもらった。「大学に行ったら得られなかったようなオモシロイ経験をしたんですよ」と伊藤さん。

学校を卒業後、浅草ビューホテルのレストランに就職、その後「謝朋殿」にヘッドハンティングされた。謝朋殿にいるときに、「新しい店を開くから来てくれないか」とロサンジェルスの日系人の社長に誘われた。

ウェイトレスは日本人女子留学生を使ったが、調理場の手伝いは全員がメキシコ人。メキシコとロスの近さを思うと納得できる。左写真の中央奥にいるのが伊藤さん。

ロスの店は順調だったが、もともと30歳までには自分の店を持とうという目標があったので退職。店を持つ前に東南アジアを放浪する旅に出た。屋台にいくと最初の頃は「お前が来るような所じゃない」という目で見られたが、次第にその空気に染まっていった。「屋台の料理はバツグンでした。新発見もたくさんありましたよ」と目を輝かす。


  30歳までには自分の店を持とう!

「○○歳までに××をしたい」と志を持っても、うまくいかないことの方が多い。でも伊藤さんは、30歳までに自分の店を持ちたいという目標をクリアした。

29歳のとき2005年にダブルハピネスダイニング(左)を開店した。この地を選んだのは、インスピレーションだという。鷺沼で育ったので、土地勘があったこともある。

離れた場所から見ると、何をやっている店か分かりにくいが、入り口にはメニューの写真がたくさん貼ってあり、中国料理だとすぐ分かる。

店の名前やロゴは自分で考えた。内装も「幟」もすべて伊藤さんのデザインである。「寝ているときに、ふっと思いつくんです。僕はインスピレーションで生きているようなものなんです」と笑う。

喜が並んだ字は双喜と言い、アメリカでは「ダブルハピネス」と呼んでいる。ふたつの喜には「すべてはお客さまの喜びのために それこそが私の喜び」の思いを込めている。

ロゴも幟も黒の下地に赤い字。スタッフの制服もシェフの服装も全部この色で統一している。

中国料理というと横浜中華街のような色の洪水をイメージするが、それとはかけ離れたスマートさを感じる。センスの良さは、各地で感性を磨いてきたからだろう。


80アイテム

パン工房June berryは常時100種類のパンが店頭にあり、その数に驚いたが、ダブルハピネスも常に80のメニューを用意している。

何度か昼時に訪れたことがあるが、ほぼ満席。客の注文もさまざまだが、作るのは伊藤さん1人。たくさんの中華鍋を上手に使い回しながらの手さばきに、目を見張ってしまった。

昼休みを利用しての取材だったが、すでにキッチンは磨かれていた。 別なときに訪れた時の伊藤さん。手際よさにびっくりした。

80種類のメニューも、インスピレーションで生まれたものがたくさんある。だからといって、単なる思いつきで料理を作っているわけではない。「創意工夫に富んだ皿・素っ気ないほどシンプルな皿・昔ながらの伝統の味を忠実に守る皿・郷土料理を現代風にアレンジした皿」の4つが根底にある。

80のなかでも特に人気があるのは、チャイニーズキーマカレーラーメン・幟にもなっている黒胡麻担々麺・揚げ茄子とパプリカのパリパリサラダ・海鮮エビ味噌炒飯・水餃子などなど。

キーマカレーラーメン。オリジナルのルーとスパイスを利かせている。 揚げ茄子とパプリカのパリパリサラダ。サラダを頼む人はほとんどこれを注文する。 人気商品のひとつ・水餃子


つぎの訪問は美容室「オープンセサミ」の羽鳥さん

伊藤さんが紹介してくれたつぎの訪問者は、美容室「オープンセサミ」の羽鳥成一さん。伊藤さんのご両親ふくめ、家族ぐるみの付き合いだという。お楽しみに。   (2010年11月訪問  HARUKO記)

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