64回目のインタビューは今出敬太郎さん(39歳)。区民まつりや交流フェスタなどで数回しか会ったことがないが、着ぐるみでパワフルに動き回っている姿を見て「この人に話を聞きたい」と思った。

ところが、もらった名刺の表面には「都筑ペット防災を考える会」会長とある。筆者は小学生の時に、なでようと近づいた犬に足をかまれ、その傷跡は今でも残っている。当時は狂犬病予防接種が義務化されてなかったので、父がすぐ病院に連れて行ってくれた。それ以来、ペットはトラウマになっている。

こんな私がペット防災を考える会の責任者に会う資格はないと思っていたが、名刺の裏面を見て驚いた。

裏面には防災関連の資格が15も書いてある。都筑区が誕生して30年、幸い大きい災害にはあっていないが、将来「直下型地震」が起こることは予想されている。大災害の場合には、行政だけでは無理だ。「こんな時こそ、民間の力、今出さんの力が必要ではないか」と、強く感じた。


都筑っ子 

「今は早渕にお住まいですが、いつから都筑に住んでいるんですか」

「父の仕事の関係で数年間神戸に住んでいたことがありますが、幼稚園も地元だし都筑っ子ですよ。神戸に住んでいた小学校4年の時に阪神淡路大震災に遭い、家族は無事だったのですが都筑に戻りました。小学校5年で勝田小に転入。ちょうど都筑区が誕生した年です」

写真は母校の勝田小学校の前で、愛犬「まる太」と。

「阪神淡路大震災の時も犬は飼っていたのですか」

「いいえ飼ってませんでした。大きな被害は受けなかったのですが、近所の方の励ましや親切は忘れられません。今思うと、防災時の助け合い・共助の大切さを学んだのは、阪神淡路大震災です」

その後、いろいろな挫折があった時に、僕を助けてくれたのが、愛犬キャンディでした。キャンディがペット防災を考える直接のきっかけです」

彼が言う「いろいろな挫折」は後に記す。


 都筑の犬の登録数は1万を越す

筆者は緑道ハレバレ会の会員なので、情報収集のためにも、健康のためにもよく緑道を歩くが、何匹もの犬に出会う。

トラウマがあるので近づいたりしないが、しつけがよくて、キャンキャン騒いだり、吠えたりしないので安心だ。知らない人でも犬を話題にして楽しそうに話しているし、困りごとの相談もしているようだ。

犬と人との関わりを見るのは、緑道歩きの楽しみにもなっている。

「ところで都筑区にはどれほどの犬がいますか」

「約1万1千匹います。犬は登録が必要なので数字は把握できますが、登録の必要がない猫も犬以上にいると思います」

「都筑の人口は約21万人です。それにしては犬や猫を飼っている人が多いですね」

「そうなんです。それだけにペット防災を考える必要があります」


都筑ペット防災を考える会を登録 

東日本や能登の災害の様子を見て気の毒だなあとは思うが、自分の身にふりかかったら、どうしていいか分からない。区の防災システムがどうなっているのかも知らない。ましてやペットのことまで考えたこともなかった。

僕も最初はどうしていいか分からなかったので、都筑区の生活衛生課(045-948-2358)に相談したら、防災にも触れているペット手帳があることが分かりました。横浜市動物愛護センター(045-471-2111)は、『災害時のペット対策』という22頁もある立派な冊子も発行しています」

「ペットが苦手な人もたくさんいるのに、同じ避難所ではまずいですね。でもペットと離れられない人もいると思います」

「人の避難場所とペットの一時飼育場所を分けてはいますが、完全な住み分けは難しいです。ペットと離れねばならないつらさ、ペットを助けられなかったと、心の病にかかっている人もたくさんいます」

問題山積みなので、2021年に都筑区民活動センターに「都筑ペット防災を考える会」を登録し、区民まつりや交流ェスタなど区民が集まる場で、啓発活動を始めました。会員募集中ですのでぜひ参加してください。連絡先はtsuzukipetbousai@gmail.com


下の3枚は、目立つ着ぐるみで、ペット防災について知ってもらうために、啓発活動をしている写真。

 
29回都筑区民まつりで

防災を考える会の最年少会員と

 
 
27回つづき人交流フェスタで
野球一筋から引きこもりへ

いつも笑顔の今出さんにも、引きこもり時代があったという。小学校の時に始めた野球は、茅ケ崎中学の時には4番でエース。「今日は今出が投げるから勝てない」と他校に言われたという。推薦で横浜商大高校に入ったが、一度もレギュラーになれずに終わった。

写真は第64回 横浜市小学生野球春季大会で都筑区のプラカードを持って行進中の今出少年。横浜スタジアムで。

「高校まで野球一筋で、まったく勉強してこなかった自分を反省し、猛勉強。多浪で念願の早稲田大学法学部に入りました。浪人生の頃、気分転換にジャイアンツのプロテストを受けてみました。大勢のスカウトの前でブルペン投球をしたのは、楽しかったです。プロテストは落ちましたが、早稲田では準硬式をやってました」

「野球漬けだった自分に嫌気がさし、猛勉をして野球に関係ない大学に入ったのに、今でも『ナンバーワン』という横浜のチームで草野球をしています。今年3月には浜スタ(横浜スタジアム)のマウンドに立てたんですよ。結局、野球は好きなんですね」


 引きこもり時代を支えてくれたキャンディ

「早稲田大学卒業後はどこに就職したのですか」

「警視庁です。孤独死や自殺現場などに遭遇し、いろいろな問題を抱えている人に会いました。こういう人たちに寄り添う弁護士になりたいと、早稲田の大学院に入りましたが、力不足で退学。絶望感を味わいました。そんな時にディズニーランドのキャストに応募し、カレー屋さんで働きました。そこでいろいろな人に出会い、悩んでいる自分が馬鹿らしくなり、元気を取り戻せたんです。世間の評価を気にしなくなったんです」

「ご両親は辛抱強く見守ってくださったのですね」

「そうですね。”今出家みな良い人”と言われています。引きこもり時代を支えてくれた愛犬キャンディの存在も大きいです。キャンディは亡くなりましたが、都筑ペット防災を考える会を作ったきっかけはキャンディです。」

「都筑区民文化祭のキャッチフレーズに2度採用されたこと、消防団に入団したこと、昭和大学北部病院の緩和ケア病棟でボランティアをしたことで、横浜市内の様々なボランティア活動をするようになりました」


「ところで、仕事は何をしているんですか」

青葉区の特別養護老人ホームで介護をしています。お年寄りが僕と話して明るくなるのが心地いいんです。介護には医療的知識も、お年寄りが生きてきた背景を知るためにも歴史の知識も必要です。もちろん人間性も。介護とペット防災はリンクしています。ペットと一緒に入れる老人ホームは非常に少ないし、介護そのものにも問題点がたくさんあります」

「今後増える高齢者介護の改善にも、力を発揮してくださいね」


残りの人生は都筑区のために 

名刺の裏面に防災関連だけで15もの資格が書いてある。資格があるだけでなく、実際に使っている。消防団にも入っているし、災害ボランティアネットワークの会員でもある。

アマチュア無線非常通信協会の会員なので、防災拠点や行政とも繋がりができる。上級救命救急法やペット災害危機管理士の資格もあるので、心強い。

「先日、横浜開港祭の手伝いをしたのすが、都筑でも緑道を使ってパレードなどどうですか。緑道をもっと楽しめる場にしたいのですが、協力してもらえますかドッグランもやってみたいです」と緑道ハレバレ会メンバーに託された。

「緑道の使い方については、いろいろな方と話し合っているところです。ぜひ協力してください」

「残りの人生は、ペットだけでなく、都筑区のために、全力で行動したいと思っています」と力強く話す今出さん。若者が都筑の将来を本気で考えている事に、素直に感動してしまった。

                             (2024年6月訪問  HARUKO記)

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