中華料理「ダブルハピネスダイニング」のオーナーシェフ伊藤さんに紹介されて、羽鳥成一さん(41歳)を訪問してきた。

羽鳥さん(左)は、センター南駅近くにある美容室「オープンセサミ」のオーナーでスタイリスト。

いちばん客が少ない時間を見計らって、午後5時から応対してくれた。予約を断ってくれたのだろう。心地よいミュージックが流れる静かな店内で、ゆっくりと話を聞くことが出来た。

「いつの間にかこんなに時間が経ったんですね」。帰るときに、つい時計を見てしまった。


    何か技術を身につけたい

高校卒業後の進路を決めるときに、「普通のサラリーマンよりも、技術を身につける方が自分には合っているのではないか」と将来を見据えた。「その時点では、何か技術をと漠然と思っていただけで、特に美容師を望んでいたわけではありません。たまたま目にしたのが、東京の美容室の見習いでした」と笑いながら話す。

羽鳥さんの出身は、新潟県の十日町市。「都会に出てみたかったので、東京の美容師の求人に飛びつきました」。たまたま飛び込んだ業界なのに、一生の仕事にしている。大好きな仕事に巡り会えない若者が多いと聞くが、羽鳥さんは美容師一筋で20数年が過ぎた。

当時は、美容室で見習いをしながら、通信教育を受けることができた。通信教育は、年に2回のスクーリングに通わねばならなかったが、「働きながら学ぶ」という理想の制度だった。

今は美容免許を持っていないと、美容室では働けない。一般的には、高卒後2年間の美容学校に通い、卒業してからはじめて免許を取得できる。

東京の中目黒から始まり、上野毛、池袋と勤務先を変えた。尊敬する先輩に付いていったり、経営方針の違いなど、理由はさまざまだ。この地に開店する前は、横浜・たまプラーザの美容室に8年間いた。


  解決の鍵になりたかった 

オープンセサミを開店したのは、平成15(1993)年4月。「独立しないと生活設計がしにくいんです。多少の苦労はあっても自分が理想とする店を持ちたかったのです」と羽鳥さん。

「都筑の地を選んだのはなぜですか」「開店したころは、駅から近いのに空き地も多く、これから発展しそうな街だなと思いました。街の発展を見守りながら、自分も成長していけるんではないか。オモシロイことに出会えそうな予感がしたんです」。

羽鳥さんの様子を見ていると、予想通り、オモシロイことに出会っていることがよく分かる。

「オープンセサミは、アラビアンナイトの開けゴマ!ですよね。名前に込めた思いはありますか」と聞いてみた。

「ぼくは田舎で育ったので、ゴマの収穫を見ているのですが、鞘にふれただけで、ゴマの実がはじけるんです。オープンセサミには、物事がはじける、解決の鍵の意味もあります。髪の悩みやヘアスタイルの解決の鍵になりたかったのです」。


    ひとりひとりの髪質に合わせて


羽鳥さんは、ひとりひとりのお客さんとじっくり向き合うことをモットーにしている。

長年のパーマやカラーで髪が傷んでいる人が多いが、ヘアスタイル・パーマ液・ヘアカラー剤などをそれぞれの髪質に合わせ選んでいる。ふだん手入れしやすいパーマも、心がけているそうだ。

当たり前と思うかもしれないが、チェーン店や大型店ではとうてい無理な話だ。

iPadの画面(左)を手で動かして、ヘアスタイルを相談することもある。iPadが世に出てからまだ1年にもならない。こういうものを即座に取り入れる進取性に感心してしまった。

店内に流れるミュージックも一方的に流される有線放送ではなく、自分のこだわりで選んでいる。「ゆったりと過ごせる環境も大事だと思っているので、音楽にも気をつかっています」とのこと。


   カメラやパソコンが好き

「仕事以外の楽しみはなんでしょうか」と聞いてみた。

「カメラが好きなんです。今は主に2人の娘の写真を撮っていますが、スタイリスト専門のサイトに、髪型の写真を投稿したりしています」。

ブログに添付してある写真のセンスがいいなと感じていたが、カメラ好きと聞いて納得した。

「カメラ以外ではパソコンも好きですよ。iPadは去年の5月に販売されたときに、すぐ手に入れました。ほんとに便利です」と言いながら、操作してくれた(左)。

上の項で書いたヘアスタイルの一覧もそうだが、子どもが退屈しないように、キッズ向けのサイトで遊んでもらったりしている。店内に無線ランを設置しているので、自由に使えるという。

「故郷の十日町市に留まる気はなかった」と言いながら、iPadの中には、ふるさとの写真や祭りの情報がたくさん入っている。これから開催される祭りの日程も把握していた。

穏やかさの中に、仕事への思い、家族への思い、ふるさとへの思い秘めている若者に出会えて良かったなと思いながら、美容室を後にした。(2011年1月訪問  HARUKO記)

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