ニュータウン開発時に造られた緑道は、合計すると約15キロメートルにもなります。早淵川をはさんで北部と南部の緑道は、正式には繋がっていませんが、「やさきのみち」や「しらさぎのみち」など歩きやすい道があり、南北が分断されているわけではありません。一周もできます。

「県をまたぐ移動は控えて」と警告が出ているコロナ禍の今、緑道を歩いたり走ったり、犬と散歩をする人が増えました。都筑に長年住んでいるのに、初めて緑道を歩いたという人もいます。私も似たような緑道初心者ですが、歩くたびに発見と驚きがあります。緑道はワンダーワールド

樹木・せせらぎ・石・橋・草花・鳥・小さな虫・水中の生物・・ぜんぶに愛おしさと心地よさを感じます。今回は、「せせらぎ」にしぼってレポートします。区役所土木事務所の4人の方が、時間を割いてくださいました。HARUKOもメンバーである緑道ハレバレ会の協力にも感謝。      
                                            

 

「樹木のおかげで暑さがやわらぐ」「せせらぎの水音を聞くと安らぐし、涼しく感じる」の会話を何度交わしたかわかりません。

せせらぎは約8キロメートル。緑道の半分には水が流れていることになります。
「ところで、この水はどこから出ているんだろう」「山の湧水じゃないの。開発される前は谷戸が多かったから、小川も流れていたと聞いている」

「こんなに都合よく小川が流れていたとは思えない」「自然の小川だったら、枯れたり台風がきたら、道路まで冠水すると思う」

こんな声をよく聞きます。古くから住んでいる方に聞いても「山からは水が湧きだすから、それを利用しているんじゃないの。よく分からない」という答えばかりです。

そんな時、港北ニュータウン「Plan of Streams」せせらぎの計画という冊子を見つけました。発行は住宅・都市整備公団 港北開発局。1989年8月とあります。写真は表紙の一部。

せせらぎ計画のはじめに次にような文をみつけました。

「緑道は昔の谷戸部分に位置しています。・・斜面の自然林を残し、もっとも低い部分には水を流して、「緑」と「水」が一体となった美しい自然空間が演出されます」

「このように緑道に水を流し、公園に池を配する計画をせせらぎ計画と称し、6水系を予定しています。この計画のもっとも大きな特色は動力を伴わない水源で水を流すことです。水道や電気の力で水を流すのではなく、自然湧水、自然降下で水を流す計画は、より自然の水循環に近づいた形と言えます」

1989(平成元)年当時の計画は、このように動力を使わないものだったのです。今はどうなのでしょう。「ポンプの装置を見たことがある」という人もいます。疑問がふくらむばかりです。
 

緑道のせせらぎは、いろいろな顔を持っていますが、両岸をコンクリートで固めず、自然の土や石を使っていることが特徴です。石の隙間が小さな生物の住処にもなります。葦などが茂り、童謡「春の小川」の風情に、ふるさとを思い出す人もいるでしょう。

でも自然の土や石は崩れてしまいがち。それを防ぐために「蛇籠(じゃかご)」を使っているところもあります。蛇籠はポリエステルの網のなかに小石を詰め込んだもの。

かと思うと、段々にして水の流れる音も演出しています。流れを階段状にしたり自然石を配置することで、音風景(サウンドスケープ)を楽しむ工夫もしています。音風景は、あたりが静まった夜になると一段と効果を発揮します。

自然石ばかりでなく、ランドスケープ担当者が配置した石の芸術作品の流れもあります。

まずは写真をごらんください。写真の一部は、緑道ハレバレ会の提供です。

 
草が茂る小川

 わき水だけのせせらぎ わき水は鉄分が多いので川底の土が赤茶色

 平行して流れるせせらぎは地下水なので
水が澄んでいる

 
小石が川に落ちないように
蛇籠で保護している

 
自然石を使った段差

 
音風景が楽しめる段差のある流れ
 
三筋の滝
 
自然石を配して渡れるようになっている
 
アーチ型の石の橋が各所にある

 
鴨池からサイフォンで「ささぶね橋」の上を流している せせらぎが途切れてない

 
木製の橋もある
 
御影橋付近は水路のデザインが優れている
 
デザイン性があるせせらぎ

 
夜のせせらぎの響はすばらしい
 
山崎公園の水路
 
越流提(えつりゅうてい)  大雨などで道路に水が溢れないような仕組み
 
カモ一家のお散歩 土と同じ色なので
見過ごしてしまいそう
 
水辺に咲く半夏生 季節ごとに
いろいろな草花が楽しめる



 

「自然湧水にしては、せせらぎが渇水した話は聞いてない」「台風で道に水が溢れた話も聞かない」「いつも同じように流れている」「ポンプらしい装置を見たことがある」など、素人が話していても先に進みません。

ということで、実際に緑道や公園を管理している土木事務所に聞いてみることにしました。

田畑有紀子副所長、尾崎智弘下水道・公園係長はじめ、4人が対応してくださいました。

「自然湧水だけでは安定した流れにならないのです。今は井戸水を利用しています」

「え!あの釣瓶を使うような井戸ですか」

「いやあ、井戸と言っても管のようなものですよ。動力ポンプで地下水を汲み上げています」

「水道水はカルキを抜いて生物を守っているという話を聞いたことがあります。水道水も使っているのですね」

「いや、水道は使っていません。自然湧水と地下水だけです」

「動力ポンプはどこにあるのですか」

「葛ケ谷公園、茅ケ崎公園、山崎公園、神無公園、仲町台の5ヵ所にあります。葛ケ谷公園から「ささぶねのみち」を流れる水は早淵川に注ぎます。それ以外は雨水の下水道管に流れます」

左写真は神無公園にある動力ポンプの装置。

「ポンプが故障したらどうするんでしょう?」

「本庁の技術者が年に1度、点検しています」

下の地図は、土木事務所で発行している「健康づくりコースマップ」の一部。動力ポンプがある場所と流れを示したものです。葛ケ谷公園のポンプは2方向に流します。は葛ケ谷公園、2は茅ケ崎公園、3は山崎公園、4は神無公園、5は仲町台。

動力ポンプとせせらぎの関係を記したので、都筑区の一部だけの地図です。全体図は区役所4階の土木事務所で無料でもらえます。都筑の緑道が一目でわかり、しかもコンパクトな優れモノ。




土木事務所には、「せせらぎの謎」以外に、「都筑区の緑被率の減少率が高いのはなぜか」「樹木や道路の管理はどのようにしているか」などについて質問しました。ていねいに答えていただきましたが、少し話がそれるので、別のレポートに生かしたいと考えています。

緑道は、土木事務所はもちろん、公園愛護会、自発的にせせらぎの浚渫(しゅんせつ―泥さらい-)や草花を植えている人、子どもの安全を見守る人など、緑道大好きの人に支えられて、日本一と言われる緑道になっています。

なお,土木事務所が行った「せきれいのみち・茅ケ崎公園一部施設改良工事」について、つづき交流ステーションで取材しています。あわせてお読みください。


                              (HARUKO記 2021年8月訪問)


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