「にじいろクラブ」ってどんなとこ?〜講師の谷さん
幼稚園にはたくさんのお母さんがいます。
そして、色んな「得意なこと」を隠し持っている(笑)お母さんが、またまたいっぱいいます。
にじいろクラブは、そんなお母さんの一人、谷加寿美さんがお友達と楽しく開催している子どものアートクラブです。
やはりと言うか講師の谷さん、小さい時から「絵を描くこと」が大好き。なのでごく自然に学校も芸術学科のあるところへ。
日本画を専攻されていたそうです。
創作へのインスピレーションは、当時同居していたご祖母様から。介護を必要とされるくらいご高齢だったそうですが、
谷さんはそこに、「長い人生を歩んできた美しさ」を見たそうです。ご祖母様のすべてを受け止め、それはたくさんの「たたずまい」を描き、何でも「入浴中」も逃すまいっ!と筆を走らせたとか。
「当時は、アートで老いを曝け出すなんて!と、色々と物議を醸したりも。純粋に美しいと思う被写体を心を込めて描いていただけなんですけどねぇ(笑)」
ターニングポイントは結婚。結婚=家庭・家族を築く、という事から、自然に「子ども」に目がいくようになったそうです。
「おばあさんから、子ども。まったく逆のキャラクターを持った対象ですよね(笑)」
積み重ねた年輪の美しさを辿る事から、生まれたばかりのこれから輝いて行く命の美しさを想像・創造する事へのシフト。そのギャップが新鮮だったといいます。
「新婚さん当初、だんな様はアートの対象とはならなかった?」との質問に「うーん、駄目だった。主人も絵の心得あるから向き合ってるうちに、純粋な創作活動から、理論の方へ話がいっちゃう。で、没頭出来ないので止め。」との事。思わず想像して笑ってしまいました。
クラブ発足のきっかけは、谷さんの創作活動を知っていたお友達ママの「せっかくだから、教えてよ♪」の一言。そうして、活動内容の面白さ、谷さんの人柄に惹かれて子ども・ママが集まり、やがて「クラブ」という形になりました。
クラブ運営にあたっての一番の「砦」は、ご自身のお子様。下のお子様は「わーいっ、お友達といっしょ♪たのしそぅー」と無邪気だったそうですが、お兄ちゃんの方が心中穏やかならず。複雑だったようで「私の想いを理解してもらうのに苦労したかなぁ」との事。先生をしているお母さん。他のお友達に取られてしまいそうで、さびしかったのでしょうね。
「何かこれだけはって信条、ありますか?」と訊ねると、「絵の描き方は教えない=教えたくない」と即答。絵をはじめとするアートは「表現」するものであって、型にはまった、想定された「きれいな物」を完成させる事ではないというのが谷さんの想い。それを表現する為のヒントは広げて見せても、そこから何を選ぶのか、どういう風に表現するのかは、子どもたち一人一人の個性。活動を重ねる中で発見する、一人と同じではない子どもたちの「個性」。それが谷さんがクラブを運営する楽しさのようです。
現在は、子どもたちとより良い時間を過ごす為に、保育に関する事も勉強中だそうです。
さぁ〜準備ですっ。これから何をするのかな?
規定の時間になり、活動室に入ります。
子どももママも慣れたもの。誰からという事もなく、会場をセッティングしていきます。鮮やかっ!
「さぁて、これは何をスタンプにしたものでしょう?(笑)」
今日は「野菜スタンプで絵を描こう」が活動テーマ。
不思議な形が押された絵を、先生がみんなの前に広げます。いかにもっ!という分かりやすい物から、どう頭を捻っても検討が付かない予想外のもの。我一番と子どもたちは答えようとします。用意された野菜はピーマン、かぼちゃ、ネギ、セロリ、ブロッコリー(これが難しかった!「オクラ」という回答がやたら多かったのも面白かったです。みんなオクラファン?)人参等でした。
「この世界に、まったく同じ形の野菜ってあると思う?」
「なーいっ!(大きな声でいっせいに)」
「という事はぁ…、これからするスタンプも、世界でたった一つだけのスタンプなんだよぉ!」
「おおーっ(歓声)」
そんなやりとりが行われ、先生はうまーく世界へ導きます。
スタンプ出来る様に、野菜を切ったり、皮をむいたり。同じ野菜でも縦に切るか、横に切るか、どの切り口を使うかで、まったく違った表情を見せます。想像力のはたらかせ処ですね。
野菜に絵の具をぬるよ〜。うまく出来るかな?
何だろうコレ?!どんどんスタンプ絵が出来てくるよー♪
調子にのった…いえいえ、アートの「波に乗った」子どもたちは、次から次へ、どんどん絵を作っていきます。絵の具を野菜に塗る手も、「これはどう?」とお母さんにたずねる口も、俄然スピードアップ。集中力が違います。
「絵は教えるものではない。私はその表現力を導き出すきっかけを作るだけ」
何の押し付けも、束縛もないこの空間が、子どもたちの創造力を自由にさせるのでしょうね。
夢中になって野菜スタンプのお花畑を広げていく女の子。野菜をコロコロ転がして、ローラースタンプに見立てる男の子。それに、野菜を「筆」に見立てて力強い絵を作りあげて行く女の子。そこにはキラキラとした子どもたちの素敵な「意外性〜発見」がいっぱいです。
みんなの個性いっぱいっ、素敵なの出来ました!
テーブルいっぱいに広がるカラフルな「野菜スタンプの絵」
みんなが満足する作品を作り終えた頃、陽もとっぷりと暮れていました。
「せんせい、できましたっ。」
満足げに、でもちょっぴり「大丈夫かなぁ」と心配そうに、ちっちゃな頬を紅く高潮させながら、出来上がった絵を先生に見せに行きます。とくに指示された訳でもないのに、きちんと並んで先生の「かんそう」を待ちます。きっと待っている間「どんな風に思ってくれるかなぁ。素敵ねっていってくれるかなぁ」と、ドキドキしているのでしょうね。無条件にかわいいっ!(笑)。
「できたねー(笑顔)、こんな感じが●●ちゃん(君)らしいね。」
「みんなはこの絵、何だと思う?」
「どんな風にして、こんな形ができたんだと思う?」
みんなで自分たちの作品の「鑑賞タイム」です。
先生である谷さんの素敵なところは、出来上がった作品に決して「巧いねー」とか「上手ねー」とか、定型の決まりきった褒め言葉を使わないところ。
まず「がんばったねー」と、それを自分で作って、そして「見てっ!」と持ってきてくれた子どもの心を、ぜーんぶ受け止める。だから子どもたちは安心して、自由に活動できる。出来そうで間単に出来ない。すてきな姿勢です。
そうそう、お片づけも子どもたちが自分で、ちゃーんとするんですよ。それも谷さんが得意の「それとなーく」で「人としてきちんとする事」を伝えます。お母さんたちもそういった雰囲気を率先して作り出しているようです。きっとそれは、谷さんとお母さんたちとの間に、お互いを思いやる心や、感謝、信頼関係があるからだろうなぁと、肌で感じました。
2008/10/27 tomotti