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都筑区南山田2丁目にある大善寺は、甘茶を栽培する甘茶寺として知られる。最近は、お釈迦さまの誕生を祝う「花まつり」よりキリスト生誕を祝う「クリスマス」のほうが盛んだが、筆者が小さい頃は、花まつりは朝からウキウキする日だった。絵本もよく読んだものだ(左)。 お釈迦さまは、4月8日にインドのルンビニ(今はネパール)の花園で生まれたと言われる。誕生仏に甘茶をかけて喜びをわかちあうのが「花まつり」だ。 ほとんどのお寺では、4月8日に「花まつり」をしているが、自家製の甘茶を栽培している寺は珍しい。 「どうして甘茶を栽培するようになったのか」を知りたい。甘茶の袋詰めをした3月22日に、石川和弘住職から話を聞いた。4月7日の花まつり法要にも参列させてもらった。
気さくにインタビューに応じてくれた石川住職は、2013年の秋に28代に就任した。28代といえば相当古い。 「大善寺は浄土宗ですね。いつごろ開いたのですか」 「時期については確定できる資料が見つかっていませんが、江戸時代の初期に大阿善達和尚(だいあぜんたつかしょう)が開山したと伝えられています」 左写真は光明山大善寺。急な階段を上ると本殿がある。 「甘茶の会があると聞きました。いつ頃できたのですか」
花まつりの取材依頼の電話をしたら、3月22日に袋詰めをするから見学したらどうかと誘われた。本殿では、住職と甘茶の会のメンバー10数人が、作業に励んでいるところだった。 「袋詰めは春の彼岸の中日の翌日にすることにしています。花まつりの時にもお分けしていますが、北山田の桜祭りでも売ります。1袋200円で100個出しますが、毎年好評です」
「数年前の夏の暑い日に、甘茶の葉を摘む作業を見る機会がありました。甘茶の木がどんなものか気にもしていませんでしたが、ガクアジサイにそっくりなんですね」 「甘茶の木はユキノシタ科。ヤマアジサイの変種です。見た目はアジサイと同じですね」(左) 「甘茶つくりの1年間の作業を教えてください」 「2月末から3月上旬は除草や剪定。6月下旬から7月上旬にも除草をします。そして7月中旬から下旬に甘茶の葉を摘む作業をします」 「葉を洗って天日干し。乾いた葉を水を含ませながら揉みます。再び乾燥させます。出来上がった葉は茶箱に入れて保存します」 「毎年5月には京都を訪れます。浄土宗の総本山の知恩院と大本山の黒谷金戒光明寺に、この甘茶を献納してきます。とても喜ばれていますよ。甘茶の会々員15名ほどが参加しています」 以下の写真は「甘茶つくりの1年」。石川住職に提供してもらった。いずれも2017年撮影。
市販の甘茶は、添加物などが入っていることが多いが、ここのはもちろん無添加。会員たちの手作りで、心がこもっている。こんな甘茶をかけられたお釈迦さまは喜んでいるに違いない。 「ところで、どうして甘茶をかけるんでしょう」 「釈迦がお生まれになったのを喜んだ水の神の使いである竜王が、甘くて清らかな雨(甘露)を降らせ、その雨で産湯を使ったという伝説にもとづいています」 「なんとなく知っていた花まつりですが、奥が深いですね」
花まつりの法要は、4月8日前の土曜日に行われる。今年は7日だった。「檀家でない方でも大丈夫です」の住職の言葉に甘えて法要に参列させてもらった。お経をあげている間に、参列者はご本尊にお参りし、誕生仏に甘茶をかけた。 最後に全員で「南無阿弥陀仏」を10回唱和。 甘茶をかけた事は何度もあるが、花まつりの法要に出たのは初めてだ。お釈迦さまに少し近づけたような気がする。
大善寺が「甘茶寺」として有名になることで、子どもたちが花まつりやお釈迦さまに親しみを持ってくれることを願って、寺を後にした。 (2018年3月4月訪問 HARUKO記) |