東京ガスの本社は、東京都港区にあるが、都筑区には茅ヶ崎中央16に「東京ガス都筑ビル」がある。レポーター2名で訪問してきた。

「都筑ビル」は、地下鉄「センター南」から徒歩5分の所にあり、ガラス張りの外観(左)がひときわ目立つ。都筑ビルの愛称・アースポートは、地球との調和をテーマに港横浜から広く世界へ向けて情報発信していく母港でありたいの願いを込めてつけられた。

神奈川支店(横浜市中区)の総務広報部長・田中さん、アースポートの営業センター所長・芦川さんが、豊富な資料を揃えて、説明してくださった(右)。

ガスの話は想像以上に奥が深く、いつものごとく2時間では収まりきれなかった。






ガス会社は、全国に200以上ある。電力会社は全国に10社しかないので、ガスも同じようなものだと思いこんでいた。東京ガスは、その中で最大の都市ガス事業者である。全国の需要家件数の35.4%を占める。件数にすると約982万。次は大阪ガス(24.3%)、東邦ガス(7.8%)と続く。いずれも2006年3月の速報値。右図は東京ガス会社案内から抜粋。

東京ガスのエリアは、東京・神奈川・千葉・埼玉・茨城・栃木・群馬・山梨だが、このエリア内でも、別のガス会社が都市ガスを供給している地域もある。

創業は、1885(明治18)年。当時は、ガス灯への供給が主業務だった。創業から70年後の1955(昭和30)年でも、都市ガスの取付メーター数は100万件にすぎない。ところが、2005年には980万件と飛躍的に伸びている。家庭のエネルギー革命と言っても、過言ではない。





6Bのガス(5,000kcal)から13Aの天然ガス(11,000kcal)への熱量変更は、1988年に完了したので、現在供給されている都市ガスの主原料は、すべて天然ガスである。

石炭やナフサで製造していた従来のガスに比べ、天然ガスは、良いことずくめ、すぐれものだ。

@
燃焼をしたときの、CO(二酸化炭素)、SOx(硫黄酸化物)、NOx(窒素酸化物)の排出量が、石炭や石油に比べ、非常に少ない。天然ガスは、クリーンなエネルギーなのだ。右図は東京ガス会社案内から抜粋。

政府は、京都議定書目標達成計画案(2005年)の中で、「CO2の排出量が最も少ない天然ガスは、目標達成のために不可欠なエネルギー」と位置づけた。

A
石油の埋蔵は中東などに偏っているが、天然ガスは世界各地に埋蔵されており、20年間にわたる長期契約も多いので、重油に比べ価格が安定している。現在は、マレーシア、オーストラリア、ブルネイ、インドネシア、カタール、アラスカ、エジプトから、輸入している。

B
天然ガスは気体だが、-162°Cまで冷却すると液体になる(液化天然ガス)。液化によって、体積は600分の1に減少するので、輸送費用が大幅に節約できる。

タンカーで運ばれた液化天然ガス(LNG)は、根岸、袖ヶ浦、扇島の3工場で気体に戻し、都市ガスに加工する。天然ガス自体は無色無臭だが、危険感知のために、独特の臭いをつける。

C
天然ガスは、エネルギー以外にも有効利用されている。ピロリ菌の感染がわかる診断薬や、膵臓機能を調べる診断薬などは、天然ガスが原料だ。工業用の高品質ダイヤモンドも作っている。





「ガスは炎が見えることもあり、どうしても火災や爆発を心配をしてしまいますが、安全についてどうお考えですか」と聞いてみた。

総務広報部長の田中さんは「統計では、ガスによる火災は、さほど多くないんですよ。ガスメーター(右)には、マイコンが内蔵されていて、ガス漏れ、消し忘れ、震度5強以上の地震を感知したら、ガスを自動遮断します。ガスコンロには、立ち消え安全装置や、250度で自動的にガスを止める火災防止装置もついています。最新の機種には、感震機能付きのものもあります」と、安全対策の具体例を熱く語ってくれた。

2回目の取材で、都筑ビルに入所しているカスタマーサービスの事業所長・町田さんの話を伺った。この事業所では、都筑区・青葉区・緑区の約21万件の検針と安全点検をしている。

毎月ガスメーターを検針するハローメイトは、同時にガス漏れなどもチェックしている。最近は、防犯の腕章を巻くことによって、子ども達を犯罪から守る役目も果たしている。ちなみに、21万件の検針は、わずか31名のハローメイトで行われている。

各家庭を無料で3年に1度巡回している検査員は、可燃性検知機で、屋内外でガス漏れがないかどうかを検査している。この検査も、21万件を12名だけで担当している。




都筑ビルの大部分を占めるのは、マンションリフォームラボである。芦川さんの名刺には、マンションエンジニアリング事業部 神奈川営業センター所長とある。リフォームラボは、芦川さんが丁寧に案内してくださった。

東京ガスリフォームラボ横浜は、マンションに関するすべてを、まるごとサポートするために作られた施設だ。専有部分と共有部分があるマンションをリフォームする場合は、独特のノウハウやプロセスが必要である。そのノウハウがわかる体験学習型ラボラトリー(情報空間)が、ここ都筑にある。

ちなみに、マンションのリフォームラボは、営業エリア内ではここ1ヶ所しかない。マンション住まいはもちろん、戸建てに住んでいる人にも、参考になりそうだ。自由に見学できるが、予約した方が、より丁寧な説明をうけることが出来ると思う。

リフォームの工法や、最新設備の説明を展示してある。 キッチン、バスなどのリフォーム前と後の実物を展示しているので、わかりやすい。 キッチンの配管がどのようになっているか、ガラス越しに見ることが出来る。





都筑ビル・アースポートは、10年前の1996(平成8)年に、「ライフサイクル省エネルギー」を考えたオフィスとして作られた。完成後に、日経ニューオフィス賞、優良省エネルギー設備優秀賞、環境・省エネルギー建築賞、空気調和・衛生工学会賞、神奈川建築コンクール優秀賞、グッドデザイン賞などを、次々受賞した。環境面はもちろん、建築の面でも、評価されていることがわかる。

快適オフィス説明のために、エネルギーソリューション事業部 エンジニアリング推進部 副部長・花岡さんが、新宿から来てくださった。室内や屋外のあらゆる所に、無駄なエネルギーを使わない工夫がみられ、そのたびに、感嘆の声をあげてしまった。すべてを説明するスペースがないので、一部しか紹介しか出来ないが、希望すれば見学も可能だ。

北側窓は、総ガラス張りで大きな吹き抜けになっている。2枚のガラスの間にアルゴンガス入れた特殊なLow-εガラスを使っている。このガラスを使うことで、夏の暑い時も、高温にならずにすむ。 南側の窓には、ライトシェルフと呼ばれるひさしがついている。直射日光を遮るとともに、日光を天井に反射させ、北側の光と調和させ室内を明るくする役目も担っている。 茶色のタイルには、粘土と琵琶湖の湖底土を半々に使い、資源の無駄を省いた。コンクリートですべてを覆わず、土を残すことで、雨水がしみ込みやすくしている。雨水は再利用。

自然光や風を最大限に利用したこのビルは、標準的なオフィスビルと比較すると、試算では、一次エネルギーで35%、CO2も25%削減できる。身近に、省エネのお手本ビルが建っていると、私たちも、省エネを意識することになる。アースポートは、区民にも「お宝」だと思う。





ガスを供給している会社なので、「環境と防災」は切り離せない。特に数年前からは、「市民といっしょに防災に取り組みたい」と、防災フェアを頻繁に開いている。学校教育にも力をいれ、昨年は、都筑区の東山田中、荏田南小、荏田西小、川和小に出むき、好評を得た。

東京ガス神奈川支店と、「I Love つづき」などの主催による2006防災フェア in KANAGAWAが、7月から8月にかけて、武蔵工大横浜キャンパスで開かれたばかりだ。8月5日と6日の防災体験キャンプの様子は、次ページでごらんいただきたい。 (2006年7〜8月 訪問 HARUKO記)

防災体験キャンプレポートへ
企業訪問のトップページへ
つづき交流ステーションのトップページへ