都筑消防署外観都筑区茅ヶ崎中央にある都筑消防署(左)に、行ってきた。平成6(1994)年11月、都筑区誕生と同時に開設された消防署である。

道路側から見ると気がつかないが、消防署は総合庁舎と同じ建物にあり、2階で繋がっている。消防署は独立した組織だと勝手に思いこんでいたのだが、横浜市安全管理局に属している。

平成18年4月に、消防局から安全管理局に名称が変わった。従来の消防本部としての機能に加え、市民生活の安全確保を総合的に取り組んでいる。

まず、予防課消防士長の村山さんが施設を丁寧に見せてくださった。次に、予防課長の石田さんが、あらかじめ提出しておいた質問事項に答える形で話してくださった。


消防車両等の種類

都筑消防署以外に、川和(川和町1221)・佐江戸(佐江戸町366)・仲町台(仲町台5丁目)・北山田(北山田1丁目)の4ヶ所に消防出張所があり、それぞれ受け持ち区域が決まっている。北山田消防出張所は、昨年・平成18年11月に勝田消防出張所の移転建替えに伴い、新たに開所された。

区内に23台ある消防車両は、用途によりいろいろな種類がある。都筑消防署には、一般の消防隊以外に、はしご隊、指揮隊、ミニ隊がある。はしご隊は、3階以上の中高層の建物火災に出動。はしごは11階までしか届かないが、区内には11階建て以上のビルがいくつもある。この場合は、ビルに設置されている連結送水管などの消防用設備を使う。7階以上のビルには、連結送水管の設置が法令で義務づけられているそうだ。

指揮隊内部指揮隊には、消火活動の指揮者が乗車。現場の状況を把握し、総合的に判断し指揮をとる。無線やFAXなども備えられた内部(左)は、まるでオフィスのようだ。

ミニ隊は、狭い路地などで、威力を発揮する軽自動車である。

仲町台出張所にある救助隊(レンジャー隊)は、危険な場所にいる人を救助する。佐江戸出張所の照明隊は、夜間の火災時に、昼間と同じように明るくする役目をになう。川和張所の特殊災害対応隊は、特殊な化学物質に対応できる車両である。

各車両を「○○車」と言わずに「○○隊」と呼ぶのは、隊を組んで活動にあたるからである。

はしご隊 指揮隊 レスキュー隊 照明隊 特殊災害対応隊
はしご隊(都筑消防署) 指揮隊(都筑消防署 レンジャー隊(仲町台 照明隊(佐江戸 特殊災害対応隊(川和)


119番はすべて消防指令センターに

消防指令センター消防署や消防出張所には、受け持ち区域があると聞いた。どこに電話をかけたらいいか迷ってしまうが、火災・救急発生時には、まず119番

横浜市内の119番は、すべて保土ヶ谷にある指令センター(左)に繋がる仕組みだ。指令センター係員が、通報内容や状況を聞いて各消防署や消防出張所に指令を出す。

119番をかけた時には、必ず住所を聞かれるが、あわてていると自分の住所すら忘れてしまうことがあるという。電話の前に、住所や目標物を書いた紙を貼っている人もいるそうだ。

どこに住んでいても、火災・救急発生時には119番をかければいいのだが、防災指導を受けたいなど身近な相談は、近くの消防出張所ですることが出来る。


いざ出動 !

消火の装備施設を案内してくれた村山さんに、「いざ出動」の装備(左)を身につけてもらった。村山さんは現在は日勤だが、かつては現場に出ていた。日勤者でも災害発生時にいつでも出動できるように、自分の装備を用意してある。装備をつけるまでの時間は、わずか数十秒だった。

目も口も保護銀色の防火服は、アルミ繊維で、熱や炎に強い。靴底にはガラスや釘を踏んでも大丈夫なように、ステンレスの板が埋め込んである。靴の先端は、足の甲やつま先を保護するために強靱に出来ている。

火の海に入るときは、顔や口周りも保護(右)する。こんなに重装備では、外の音は聞こえるのだろうか。心配になって聞いてみた。「穴が開いているので、聞こえるんですよ」と、その部分を見せてくれた。


都筑区の火災件数(平成18年)は61

放火火遊び平成18年1年間の区内の火災発生件数は61件。横浜市全体では999件。8年ぶりに1,000件を下回ったそうだ。都筑区の人口18万人からすると、61件の火災は多いのか少ないのかよくわからない。でも過去10年間の平均が64件だから、人口増加を考えると減る傾向にあるのかもしれない。

区内の火災原因の1位は放火(左)で、約5割を占める。2位は火遊び(右)、3位はたばこ、4位は食用油過熱出火である。

横浜市全体では、1位が放火、2位がたばこ、3位が食用油過熱出火、4位がこんろと、都筑区とは少し違う。都筑区では2位に「火遊び」が入っている。

放火は連続して発生する場合もあることから、安全管理局のHPに、放火発生状況を掲載している。


署内の設備

通信室自炊用食堂日勤以外の署員は、火災を含む災害や救急の要請にいつなんどきでも応えられるように、朝8時45分から翌朝8時45分までの24時間勤務体制をとっている。 

消防車両が並ぶ道路に面したところに、通信室(左)がある。真夜中でも1人は受付監視をしているので、直接駆け込んで助けを求めることもできる。

署内をいっときでも離れられない勤務なので、それに応じた設備がいくつか設置されている。
仮眠室
食事は外に行けないので、自炊用の食堂(右上)がある。去年初めて女性の消防隊員が都筑消防署に誕生したが、それまでは男だけの世界だった。

「作ってくれる人がいないので、自分たちで、いろいろな料理を作ります。食べている最中に出動要請もあるんですよ。麺類だったら、戻ったときには完全に伸びています」と笑わせた。「料理だけだったら、奥さんはいらないです」と、村山さんは又笑わせた。キッチンも食堂も実に清潔で感心してしまった。

訓練室24時間寝ずの番というわけではない。何もなければ、交代で仮眠をとる部屋(右中)もある。「熟睡はできませんが」ということだった。

24時間勤務は体力的にきついし、消防の現場では筋力や瞬発力も必要だ。基礎体力を維持するために、筋力トレーニングやランニングを怠らないようにしている。

署内には、長いロープや筋トレのマシンなどが装備された訓練室(右下)があった。年に1回は、全員が体力測定を受けねばならない。測定結果に基づいて等級をつけるので、署員は日頃から頑張っているそうだ。




都筑区の救急発生件数は5785件

119番を回すと「火事ですか?救急ですか?」と聞かれるように、救急活動も消防署の主な業務である。やはり保土ヶ谷の消防指令センターから、各消防署や出張所に指令が出る。

区内の救急発生件数は、平成18年は5,785件。横浜市全体では155,317件。火災発生よりずっと多い救急車の要請がある。それにしては、救急隊は2隊(都筑消防署に1隊・川和出張所に1隊)しかない。心配になってしまうが、隣接の区にも救急隊があるので大丈夫だという。

救急隊は3人で出場し、意識・呼吸・脈拍などの確認後、応急処置をしたり医療機関に連絡・搬送する。救急救命士が処置できる範囲が増えたことで、多くの人命が救われている。

特に救急車に積んでいるAED(自動体外式除細動器)は、心室細動を起こしている症病者には有効だ。心室細動とは、心臓の筋力が不規則にブルブル震え、全身に血液を送り出すポンプの役割を果たせない症状を言う。

AEDは、地下鉄駅、都筑区総合庁舎などにも置いてあり誰もが使えるが、日頃訓練していないと使いこなせないような気がする。

救急車救急の字が逆(左)になっている。ドライバーがバックミラーで見たときに、「救急」の字が読めるようにとの配慮だという。音だけで救急車だと気づくだろうと思うが、細かい点に気を使っていることに感心した。

実際の出動以外に、ビルなどへの立ち入り検査・消防用設備の検査・消火栓や防火水槽の点検など、災害による被害を未然に防いだり、最小限にくい止めるための業務をこなしている。

現場でのてきぱきとした行動には、日頃の訓練・点検・研鑽という裏付けがあってこそだと、今回の訪問でよくわかった。
(2007年1月訪問 HARUKO記)

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