港北区大豆戸町155にある水道局港北・都筑地域サービスセンターを、レポーター2人で訪問してきた。 昨年平成18年11月6日に横浜市の組織が再編され、水道局として、9ヶ所のサービスセンターが発足した。都筑区は港北区と合併し、新庁舎(左)が大豆戸(まめど)の地に完成したばかり。ヒートアイランド対策が随所に施され、環境に配慮したビルである。これだけでも見学に値する。 サービスセンターの主な仕事は、検針・料金徴収・防災訓練・出前水道教室・イベントの実施など。 施設の案内や水道全般にについて話してして下さったのは、センター長の浅見さんと係長の塚田さん(右)。
横浜に近代水道ができたのは、120年前の1887(明治20)年。日本で初めての近代水道だ。 近代水道というのは、濾過した水に圧力を加えて鉄の水道管で送り、蛇口からいつでも使うことができる水道を言う。 開港による急激な人口増で安全な飲料水が足りなくなり、神奈川県がイギリス人のH.S.スペンサーに依頼。スペンサーは約2年かけて、道志川から野毛山貯水場までの約44キロメートルの水道を完成させた。 野毛山動物園に向かう野毛坂に、スペンサーのレリーフと最古の水道管(上)が展示してある。野毛山公園には、スペンサーの胸像もある。
横浜市の水道は、道志川系統(道志川が水源)・相模湖系統(相模ダムが水源)・馬入川系統(津久井湖の城山ダムと馬入川が水源)・企業団酒匂川系統(丹沢湖の三保ダムと酒匂川が水源)・企業団相模川系統(宮が瀬ダムと相模川が水源)の5ヶ所の水源から取っている。 では、都筑区の水道水はどこから来ているのだろう。「基本的には、北部は企業団酒匂川系統、南部は馬入川系統と企業団酒匂川系統の混合です」とのこと。 都筑区民は、三保ダム(左上)と酒匂川、城山ダム(左下)と馬入川の水を飲んでいることになる。ただし、5つの水源の水は、配水池で混合された後に、不足している地域に送られる場合もある。実際には、「この区の水源はここ」と断定できるほど単純ではなさそうだ。 水源の水が安全な飲料水になって家庭などに届くには、おおまかに言うと、水源→取水堰で取水→沈殿池→浄水場(川井・鶴ヶ峰・西谷・小雀)→配水池の施設を経ている。 ダムの底が見えて水不足が大問題になる自治体もあるが、神奈川県にはそうした心配はない。「水源は充分あります。渇水の心配はありません」と、頼もしい話だった。
どこぞの国の大臣が「今ごろ水道水を飲んでいる人などいない」と言って、物議をかもしたことは記憶に新しい。 この発言を聞くと、水道水は飲めないのじゃないかと不安に思うが、結論から言うと、横浜の水は国の基準値を高い水準でクリア。「安心して飲んでください」とのことだった。 左の図(水質検査白書のパンフより抜粋)にあるように、水質検査は、水道法で決められている項目が54、横浜の水道局が独自に行う37項目、合計91項目。160種類もの検査を行っている。 にもかかわらず、水道水はおいしくないからと、ペットボトル入りの水を買う人は多い。スーパーなどに設置されているクリアウオーターを飲む人も多い。 「水源や川が汚れれば、どうしても塩素も多く入れなければなりません。水源や川をきれいに使って欲しいですね」と、塚田さんは言っていた。
水道管が破裂して水が漏れた、断水した、蛇口の水が止まらない、水洗トイレが流れないなど、水道に関して困ることはたくさんある。サービスセンターでは、こういう場合にいつでも対応できるように、365日・24時間受付(電話は847-6262)をしている。水道局所有の道路の配水管に原因がある場合は無料で修理するが、宅地内の設備に問題がある場合は民間会社を紹介する。民間の工事は有料。 もちろん、サービスセンターでは、引越などでの中止手続き、水道料金の問い合わせ、水質検査の申し込みなども受けているが、ハプニングの時に24時間対応してくれるのは、非常にありがたい。
最近の新潟中越沖地震においても、電気・水道・ガスなどのライフラインの被害は大きかった。幸い都筑区では一度もこういう災害に見舞われていないが、水道局は常に災害対策を考えている。中越沖地震のときも、このサービスセンターから2台の給水車が応援にかけつけた。 都筑区の「応急給水マップ」(右)で、いざという時の給水拠点を知ることができる。自分の家に近い給水拠点を覚えておくと便利だ。 方形の青い印は配水池。牛久保配水池と港北配水池の2ヶ所ある。通常は、浄水場の水を各家庭に配水する施設だが、災害に備え、1週間分の飲料水は常に確保している。 青い丸印は地下給水タンクがある小中学校。都田中・中川西中・牛久保小・勝田小・茅ヶ崎小・つづきの丘小・山田小の7ヶ所にある。 普段は配水管の一部として機能。地震時には自動的に緊急閉止弁が作動して、タンク内に飲料水を確保する。 薄黄色の○印は、緊急給水栓がある所。消火栓に給水装置を取り付けて、給水する施設である。 荏田南中・川和中・茅ヶ崎中・中川中・荏田東第一小・都田小・牛久保公園・大原みねみち公園・鴨池公園・滝ケ谷公園、都筑中央公園・鳥山公園・山田富士公園・都筑区総合庁舎の14ヶ所ある。 地下給水タンクが設置されている牛久保小学校を訪ねてみた。校庭のすみに、少し離れた2つのマンホールと説明板(左)があるだけで、一見しただけでは地下にこのような設備があることは分からない。 「私も見たことはありませんが、2つのマンホールの間にタンクがあるらしいです」と、副校長先生が案内してくださった。 給水タンクはこのように目立たない場所に設置してあるので、ありかを知らない人が多いと思うが、満々と水をたたえたタンクが地下にあると聞いただけで一安心だ。
給水車、地下水タンク、給水栓が用をなさない場合もある。そんな時に備えて、水道局では、最低3日分ひとり9リットルの水の備蓄を奨めている。 サービスセンターでは、水缶(350ミリリットルが50円)とペットボトルの「はまっ子どうし」(右)(500ミリリットル100円、2リットル200円)を販売。ケース単位の場合は配達もする。一部コンビニやスーパーマーケットでも販売している。 近代水道の創始者パーマーさんが探し当てた水源の道志川の水は「赤道を越えても腐らない水」と言われ、外国航路の船員にも喜ばれたという。その道志川の支流・大群沢の清流水を無菌状態で熱処理してそのまま詰めたものが「はまっ子どうし」。「おいしい!」と評判だ。 横浜市は、道志村に水源かん養林を持っている。都筑区とほぼ同じ面積の林。道志川の水質を守るために、間伐・枝打ち・下草狩りなどを行っている。サービスセンターの1階ロビーに、道志村の間伐の丸太や、「はまっ子どうし」のペットボトルで作った横浜ベイブリッジが飾ってあった(左上)。 こういう話を聞くと、道志川が水源になっている水道は、特別おいしいような気がするが、残念ながら都筑区民の水道の水源は道志川ではない。
社会科で水道を学ぶ小学校4年生に、出前教室(左)を行っている。今年度は、荏田小・都田小・川和東小・北山田小・都筑小・茅ヶ崎台小・牛久保小の7学校にすでに出向いている。ビデオやろ過実験などわかりやすい授業が子ども達には好評だ。 町内会には防災訓練で出張しているが、水道全般に関する出前講座もしている。気軽に申し込みの電話をして欲しいとのことだった。 「水道料金は高いなあ」とぼやいていたが、「安全な飲料水をいつでも得られるには、仕方ないことなのだ」と納得できた。目に見えない場所にさまざまな設備があり、万全の水質検査も行っている。 (2007年8月訪問 HARUKO記) |
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