1回 リコー中央研究所


社員の加治さんと笹さんは、ロビー(左)で私たち3人を、にこやかに迎えてくれた。レンガの外観もあか抜けしているが、内部はもっとおしゃれだ。
特に、山繭で作った絹糸製のオブジェ(右)の揺れに、目を見張ってしまった。


都筑区新栄町にあるリコー中央研究所は、ほぼ20年前の1986年に完成した。ニュータウンに進出した企業の中では、最初に拠点を構えたことになる。その意味でも、1回目の訪問に相応しい企業と言える。

50周年事業のひとつとして、研究開発本部を作ることになり適地を探していた。そんなときに、横浜市が公害を出さない企業を誘致をしていたので、両者の思惑が一致した。

この研究所では、360人の研究職、40人の事務職が働いている。リコーと聞いて私たちが思い浮かべるのはコピー機だが、もちろんそれだけではない。事業は、画像エンジンやソフトウェアなど多岐にわたっている。

中でもこの研究所は、最先端の技術を開発している。残念ながら、研究所の本体には、入ることができなかった。企業秘密だから、当然かもしれない。

欅のテーブル

「これが運び込まれた日の事は、忘れられません」。20数年前に研究所建設業務に携わった加治さんは、テーブルの木肌をなでながら、話し出した。

加治さんが感慨深げに語るのも無理はない。完成するまでには数々のドラマがあった。研究所を設計するにあたって、すべての部屋に、外のようすが見える窓をつくることを重視した。

その中で生まれたのが、まんなかの吹き抜け下にできた広いフロアだった。

この空間に何を置こうか。ああでもないこうでもないと議論百出。

最終的に採用されたのが、アーティスト石黒一夫氏のアイディア-欅(けやき)の巨大なテーブルを置くこと-だった。

3本の欅の大木を垂直に切り落とし、8枚の板を作り、中央でつなぎ合わせた実にシンプルで素朴なものだ。(上)。非常にユニークな芸術作品であり、世界にひとつしかないリコー研究所の宝ものとなった。

完成した製品を、どうやって部屋に設置するか。天秤という前時代的な道具を使って運び入れたのである。無事収まったのは、社員が引っ越してくる前日。設置し終わったあと、プロジェクトに携わった仲間と、このテーブルで祝杯をあげずにはいられなかったという。


取材に訪れた日、欅のテーブルでは、3グループの研究員が、フランクな雰囲気で話し合っていた。もちろん各人の机はあるが、ここに集まると良いアイディアが生まれるらしい。「使われてこそ家具だ」という石黒一夫氏の理念が生きている。

居心地が良いのは、テーブルだけはなさそうだ。吹き抜けの天井は、ガラス張り。(右)。見上げれば、青空も目に入る。

夏の暑いときに冷房を使いすぎないように、直射日光を避ける工夫もしてある。スイッチを押すと、日よけが出てくる仕組みになっている。

欅のぬくもりと天井からの自然光が、無機質になりがちな研究所の雰囲気を、やわらかなものにしている。


緑に囲まれた食堂

「自慢できるもうひとつは、食堂です」と加治さんと笹さんが案内してくれた。天井が高く、ガラス越しに竹林が見える。(右)。まるで、一流ホテルのダイニングルームにいるようだ。

昼食はもちろん、朝食も夜食も用意されている。ちなみに夜食をとる社員は約200名。半数が夜もここで食べる。それだけ残業をする社員が多いと言うことか。

一般には開放していないので、喫茶や食事を試すことは出来なかったが、メニューにはケーキセットもあった。

環境にやさしい

研究所には、ボランティアリーダーが4人いる。本社の社会環境本部が、リーダー養成の講習会を開き、認定したメンバーだ。

「具体的にどんなボランティアをしていますか」
「なるべく地域に密着した活動をしたいと考えています。隣接しているせせらぎ公園の清掃や、古民家のすす払いもしています。餅つきや竹炭焼きにも参加できるので楽しいですよ」と、リーダーのひとり銭谷さんから、さわやかな答えが返ってきた。

リコーグループのボランティア活動の記事はこちら

昼休みに、仲町台の駅から会社までの道路を清掃することもあるという。地下鉄開通後は、車通勤が禁止されたので、ほとんどの社員がこの道を利用する。通勤に車を禁止しているのは、環境に配慮してのことだ。リコーの御殿場工場は、日本で初めてISO14001を取得したことで有名である。

2005年1月27日にリコーの「環境ボランティアリーダー全社会議」が中央研究所で開催されました。
都筑区役所職員、せせらぎ公園・早渕公園愛護会、港北NT緑の会などの地域の人たちも参加し、大変意義あるものでした。
環境ボランティアリーダー全社会議のようすはこちら

(2005年3月訪問・レポーターは晶子・TIMAKI・HARUKO)

リコー中央研究所ホームページ




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