影絵専門劇団「かかし座」(右)を訪問してきた。南山田町4820番地、山田神社の鳥居からほど近い所にある。以前、南山田町の公民館が建っていた所だ。

都筑区には、すばらしい企業の拠点が数多くあるが、文化面では心許なかった。「かかし座」の社屋・スタジオが、1994年に移転してきたことによって、文化の香りまで運ばれてきたような気がする。影絵専門劇団として日本一の「かかし座」そのものが、区民にとって大事な「お宝」になっている。

訪問した日は、北風が強く底冷えがしたが、代表の後藤圭さん(左)から、お話をうかがっているうちに、心が和み身体まで温まってくるのが、自分でもわかった。

ひとりで2時間以上、誠実に対応をしてくださった圭さんは、かかし座創立者・後藤泰隆(ペンネームは、とう・たいりう)氏のご長男。泰隆氏が1979年に急逝したので、その後を継いで代表の座についている。




かかし座は、日本初の影絵専門劇団として1952年に創立された。時を同じくしてNHKの専門劇団になり、最初はテレビを通して、たくさんの影絵劇を送り出してきた。年配の方は「ルパンの奇巖城」「家なき子」「杜子春」など、覚えているかもしれない。

1968年頃から、舞台にも進出するようになった。テレビであれ舞台であれ、影絵を通して「子どもたちに夢を」という気持ちが根底にある。創立者・泰隆氏は、「影絵劇への招待:晩成書房刊 1979年初版」(右)の中で、影絵の効用を次のように述べている。ごく一部だけ抜粋。

〈夕暮れの時はよい時、限りなくやさしいひととき……〉 これは堀口大学の詩の一節です。
良くも悪くも生きざまのすべてを照らし出す陽光も、今は西に沈み、草も木も人もその余光の中ですべて影となっていくこのひとときは、何かホットした……忘れていた自分をとり戻したような、そんな貴重なひとときに思えます。
物のかたち、つまり輪郭線だけがはっきりと浮き出し、その他をヴエールにつつんでしまう。この形式、この影絵的世界は、人々の心を夢幻(無限)の想像へとかりたてる、不思議な性質と、魅力をもっております。

「日本人は、影絵が好きなんですよ」と圭さんは語っている。世界でいちばん影絵が盛んなのは、日本だとか。かかし座以外にも、「影法師」「民話座」「角笛」「藤城清治の劇団」などがある。

かかし座だけでも年間に数百の公演をしている。「え!数百も。毎日公演しなければ、間に合いませんね」と心配になった。「公演班は4つ(風班・ポケット班・シャドウ班・ベガ班)あるので、分かれて公演しています」と聞いて、安心。同時に、こんなにも全国の子ども達が待っていてくれるのかと、私まで嬉しくなった。



どんな風にして、背景を作るのか。どんな風にして、人形を作るのか。どんな風にして人形を動かすのか。実際に制作したものを見せてもらった。

右は、NHKの番組「ご近所の底力」の、竹藪の被害が増えて困るという番組で使われた影絵(写真は、かかし座提供)。

テレビに映るときれいだが、背景の竹林とお爺さん人形の実物は、一見すると、そっけない(左)。黒い厚紙製のお爺さんには、針金やナイロン糸や棒がついていて、お世辞にも綺麗とは言えない。ところが、棒を動かすと、素人の私でも、それなりに細かい動きが出来る。団員が動かすことによって、より繊細な演技になる。カラフルな照明を通すと、右上のような幻想的な画像が出来上がる。




先日1月14日に「都筑公会堂」で「アラジンと魔法のランプ」が公演され、大成功だったと聞いている。当日は超満員で、子どもや大人の熱気に包まれた。実際に公演を見たIレポーターの感想をお読みいただきたい。

近場での次の公演「星の王子さま」(左)は、2月27日(月)19時、28日(火)14時、横浜赤レンガ倉庫1号館で行われる。「横浜世界演劇祭2006」の一環でもある。

前売り券2,000円、ペア券3,000円、当日券2,500円と驚くほど安い。申し込みは、かかし座のHPからでも電話(045-592-8458)でも。

かかし座の舞台は、影絵を映すだけではない。録音テープを使わず、実際の人間がしゃべり、歌い、演技もする。影絵の操作もする。右上の舞台写真(かかし座提供)で、さわりだけでも感じ取って欲しい。影絵だけれど、ライブ感がある舞台を目指していることがよくわかる。



一昔前の日本では、指影絵を障子に写して遊んでいた。蛍光灯の普及と障子の減少、遊びの多様化で、指影絵を楽しむ環境は消えた。しかし、最近は、手影絵がひそかなブームになっている。テレビのバラエティでも好評だが、公演でも大人気だという。

もちろん「星の王子さま」公演の時にも、手影絵ショー(左)を実演してくれる。かかし座は、動物だけでも100種以上のバリエーションを持っているという。

100種のバリエーションのうち40数種を紹介している「おもしろ影絵ブック」(著者・後藤圭、PHP研究所刊)が、最近出版された。すぐにでも出来そうなものがたくさん載っていて、親子で楽しめそうだ。
(2006年2月 訪問 HARUKO記)

「アラジンと魔法のランプ」鑑賞の感想
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