特定非営利活動法人アーモンド コミュニティ ネットワーク理事長の水谷裕子さん(左)を訪問してきた。

初めて水谷さんにお目にかかったのは、去年の9月から12月に行われた「凸凹コミュニティアートプロジェクト」の時である。

活動の一端にふれ、なんて素晴らしい方だろうと思いインタビューのお願いをしていた。「ブラック労働者です」と笑いながら話すほど、超多忙のスケジュールの合間に、話を聞くことができた。

アーモンドコミュニティネットワーク(ACN)の拠点は、北山田1丁目のエキニワビルの1階と2階にある。エキニワの名の通り、グリーンラインの北山田駅に直結している。

月1回の「子ども食堂」に一緒に参加し、引き続きのインタビューである。

 アーモンドは希望や復活の象徴


NPO法人「アーモンドコミュニティネットワーク(ACN)」は、2012年11月に設立された。左はACNのロゴ。見ているだけで気持ちが明るくなる。

「アーモンドの花は希望や復活を象徴しています。日本ではあまり馴染みがない花ですが、荏田にもアーモンドの木があるんですよ」と水谷さん。

水谷さんの名刺の裏には、いっしょに あ・る・く(寄り添い型生活支援事業)、ともに あ・る・く(不登校・ひきこもり・青少年支援事業)、傾聴コミュニティカフェ(居場所・こころのサポート)、傾聴ワーカー養成(子育て・発達障がい・外国籍支援)とある。

ここに活動の概要がほぼ集約されているように思うが、簡単に言うと、生きづらさを抱えている子どもや青少年や親や外国籍の人のための居場所つくりを目指している。

社会福祉協議会、民生委員児童委員、神奈川県や横浜市や都筑区の行政機関とも連携して、幅広く活動している。

 アート活動を通して自己表現


「凸凹コミュニティアートプロジェクト」の意味はよく分からないながら、横浜北部に伝わる民話のアニメを上映するというチラシにひかれて、歴博での催しに参加してみた。渡された冊子の表紙も下のように垢抜けたデザイン。以前取材したことがある虫送りや、古くから伝わるキツネ伝説がモチーフになっているらしい。

アニメの上映会だと軽く考えていたが、実はたくさんの人の深い思いがつまったプロジェクトだということを会場に行って気づいた。10年以上区民レポーターをしているのに、舞台挨拶などからACNの活動を初めて知ったのである。

 

アニメの監修は、イタリアで活動しているグリム・ツインズ(都筑出身の牧田あゆみさんとバルバラ・ラーキさん)、アニメーションは星野拓さん、グラフィックデザインは西村亜希子さん。

アニメの1つ「雪の約束」は、伝説上のキツネ「葛の葉」の話と横浜の竹林と虫送りのイメージを重ねた作品。2つの世界、2つの文化、2つの魂が出会う幻想的な画面に、引き込まれてしまった。

「凸凹コミュニティアートプロジェクト」の凸凹は、不登校や引きこもりなど凸凹な個性を持つ若者を指す。アート活動を通していろいろな人と交流し、さらに自己表現できるようになって欲しいと、水谷理事長はじめスタッフは願っている。


上映前に水谷さん(右)や監修の牧田さん(左)らの挨拶 
ここでACNの活動説明もあった

 
上映後に行われたワークショップ
横浜北部の民話をもとにアーティストブックを作成

「アートプロジェクトは前からやっているようですが、小さなことでも結構です。成果はありますか」

10代から出入りしていた生きづらさをかかえていた若者が、今は芸術系の大学に通ってアートの分野で活躍しているんです。不登校の子どもたちの励みになってくれると思います」と嬉しい答えが返ってきた。まさにアーモンド。

 アーモンド子ども食堂


全国に広がりを見せつつある「子ども食堂」だが、ACNでも3年目を迎えた。北山田駅の横浜銀行の隣に厨房つきの施設「アーモンドホープセンター」が借りられたので、食堂をオープンすることができた。ガラスで覆われた明るいカフェで居心地がいい。

「アーモンド食堂」として、子どもが一人で安心して食べに来られる「地域のコミュニティ食堂」を展開している。子どもも大人も一緒にご飯を食べて、楽しい時間を過ごす「地域の子どもの居場所」活動である。食材の一部は、協力してくれる都筑区の農家などから新鮮な野菜が届く。


拠点の入り口 食堂のメニューも貼ってある

 
広々とした厨房で準備中
 
今日のメニューはチキンソテー ラタトウイユ添え
フルーツゼリー


 
楽しそうに食事する子どもたち
オイシイ!の声が上がる


上でレポートしたアートプロジェクトや子ども食堂は、活動のほんの一部であるすべてを紹介する余白がないのは残念だが、主なものをあげてみる。会場はすべて北山田拠点とは限らないのでHPや電話で確かめて欲しい。

ともに あ・る・く (居場所支援、学習支援、不登校支援。対象は小・中・高校生〜30代まで、月曜から金曜の14時30分~19時30分。所得に応じた利用料の減免制度あり)


TCKs Green House(国際結婚、外国人家庭、帰国子女などが自分らしく暮らせるためのコミュニティ。毎月第4木曜日の10時30分から12時30分、参加費は500円)→infoacn@npoacn.or.jp

Almond English Cafe(多文化理解と共生意識を育み英語能力を伸ばすのが目的。講師はロバート エスキルドセンさん。毎月第3土曜日の14時~16時。参加費500円)→infoacn@npoacn.or.jp 


アーモンドの会(こころを聴くカウンセリング勉強会。講師は水谷理事長。月1回火曜日 10時~12時)

他にも「つづきMYプラザ」主催の思春期セミナー、親子関係と傾聴の勉強会などもたびたび開かれている。

水谷さんはインタビュー冒頭に「ブラック労働者です」とおしゃったが、確かに身体がもうひとつ欲しいほど忙しい日々。でも、たくさんの人の心の支えになっているからだろうか。とても生き生きなさっていて楽しそうだ。彼女の笑顔に接するだけでパワーがもらえる。

居場所つくりのきっかけは何? 


「水谷さんが都筑区に越してきたのはいつですか。居場所作りの活動をはじめたきっかけは何だったのでしょうか」

「越してきたのは約30年前。まだ都筑が誕生していない頃です。1998年、20年前に北山田小コミュニティハウスの依頼を受けて”対話によるカウンセリング勉強会”を開きました。その後このグループで”アーモンドの会”を立ち上げました。都筑区の人口が増えるにつれ、生きづらさを抱えた子どもや青少年、外国籍の方が増えてきたのです。カウンセリングの活動が認められ、社会福祉協議会や横浜市の依頼で講演の機会も多くなりました。こうして活動の場が広がり、2012年のNPO法人設立にいたりました」

「若い頃から関心があったのでしょうね」

高校生の頃から実際に英語が使えるようになりたいと、英語学校にも通いました。その後ドラマメソッドという、演劇理論を通して英語を教える仕事につきました。そんな時に私立の小中学校の要請で英語を教えに行きました。
その学校は当時として珍しく、同じクラスに自閉症の子が1割ぐらい在籍。最初は戸惑いましたが、障がいのある子・ない子という垣根を取り払って教育したほうがいい事を、子どもたちに教えられたのです」

「クリスチャンの私が通っていた教会は、カウンセリングにも力を入れていました。いろいろな困難を抱えている人の相談にもたずさわってきたのです。この経験が今の私の活動の原点ですね」

ところで、ご主人は活動に理解ありますか

「もちろん!彼はACNの副理事です。アメリカ人ですが、国際基督教大学で日本近・現代史を教えているんですよ。彼も異文化の中でコミュニティ作りに悩んだことがあります。だから横浜の歴史・文化を通じて市民の意識を高めることの活動にも熱心なのです」

ツーショット写真は、凸凹コミュニティアートプロジェクト行事のひとつ、「横浜の北部の民話に聴く-民と族の間に挟まれて-」の講演をなさった時のご主人のロバート・エスキルドセン氏と水谷さん。後で知ったのだが、Almond English Cafeの講師はご主人。

 ボランティアや賛助会員を募集


ACNでは、活動理念に賛同してくれるボランティアを募集している。子ども食堂での調理や学習支援や傾聴など協力できることはたくさんある。生きづらさを抱えた人の居場所作りに関心のある方は、気軽に問い合わせて欲しいそうだ。電話は045-594-7586

傾聴による支援はコミュニティ作りの柱なので、傾聴ボランティアになるための勉強会や講演会もたびたび行っている。「傾聴学習の経験はない」と言う方のためには、これらの勉強会等で一から指導している。

他に年間12,000円のマンスリーサポート会員も募集している。まずは、北山田駅徒歩1分のエキニワ北山田ビルでの催しに、顔を出してみたらどうだろうか。左写真は、エキニワ北山田ビル1階にある拠点入口。山田富士公園側にある。

                     (2018年5月 訪問  HARUKO記)
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