ユースプラザの入り口よこはま北部ユースプラザ(左)を2人で訪問してきた。この施設は、都筑区茅ヶ崎中央11のウェルネスセンタープラザ南ビルの3階にある。地下鉄「センター南駅」から徒歩6分。

名称を聞いただけでは、具体的に何をしているプラザなのか分からない。簡単にいうと、不登校や引きこもりなどで、社会参加がしづらくなっている若者たちの居場所づくりをしている。

そういう若者たちが気軽に集まれる場所、次のステップへの準備をする場所がユースプラザだ。

施設長の末木さんが、取材に応じてくださった。大震災のあとで予定が立てにくく、訪問日は延び延びになってしまったが、約束の2時間はあっという間に過ぎた。今の日本がかかえる問題なども考えさせられた訪問になった。


2010年にオープンしたばかり

よこはま北部ユースプラザは、平成22(2010)年3月に開所。まだ1年ちょっとの新しい施設だ。主に港北区・緑区・青葉区・都筑区の北部エリアの若者をサポートしている。同じような施設は、保土ヶ谷に西部ユースプラザ、根岸に南部ユースプラザがある。4ヵ所を設置する構想があり、その3番目ということになる。

施設長の末木さん横浜市こども青少年局の補助事業で、運営はNPO法人の「月一の会」。青葉区市ヶ尾にある「月一の会」は、平成10年にひきこもりの若者を抱える母親の会として活動を開始。平成19年にNPO法人になり今に至っている。

末木さん(左)は、もともと「月一の会」の活動に関わっていたが、オープンと同時に常勤職員になり、この3月から施設長だ。施設長という肩書きから年輩の方を想像していたが、ごらんのようにまだ30歳代前半である。

常勤スタッフは、末木さんともう1人の計2人。他に、居場所・相談・事務担当など非常勤スタッフが10数名かかわっている。相談員は、キャリアカウンセラー・臨床心理士・精神保健福祉士などの資格を持っている。


引きこもりってどんな状態?

間取り図ユースプラザが受け入れているのは、引きこもっている15歳から39歳までの若者とその家族だ。左は、北部ユースプラザの居場所や相談室の間取り。居場所は広々としている。

40歳未満なのは、連携している就労支援機関が、40歳未満を対象にしているからだ。最終的には、仕事に就き社会生活をすることを目的にしているので、ある程度の年齢の区切りは当然かもしれない。

ところで、引きこもりは、具体的にどういう状態を言うのだろう。厚生労働省の定義によれば「6ヶ月以上自宅にひきこもって、会社や学校に行かず、家族以外との親密な対人関係がない状態」だという。

引きこもりが増えている話は聞くが、何人ぐらいいるのだろうか。末木さんが用意してくれた内閣府の資料を見ると、15歳から39歳の推定人口3,880万人(2009年統計)のうち、狭義の引きこもりは0.61%で23万6千人もいる。

狭義の引きこもりは、「近所のコンビニなどには出かける、自室からは出るが家からは出ない、自室からはほとんど出ない」状態を指している。

ひきこもりの第1世代が高齢者になるのは、2030年頃。納税しなかった高齢者が増えて、年金受給が逼迫する事態が目に見えている。

そういう意味でも、引きこもりの若者を減らしたい。でも今の世の中は、若者が生きにくい社会になっている。引きこもりのきっかけは1人1人違い、何が原因なのかもはっきりしない。コミュニケーション能力が重視されるあまり、それが不得意な人は評価されず仕事にも就けない。

以前は、病気や貧困で学校を辞めざるを得ない人がいたが、今は他の要因で不登校や引きこもりの若者が増えているそうだ。末木さんからこんな話を聞いているうちに、「どうして日本はこんなに生きにくい国になってしまったのだろう」と考え込まざるを得ない。


まったりの日

催しのお知らせ北部ユースプラザの居場所は、火曜から土曜の12時から18時まで。相談(要予約)は月曜から土曜の11時から19時まで。初めての方は、事前に電話をして欲しいとのこと(045-948-5503)。

4月の予定表を見ると、まったりの日(プログラムを組まずに、まったりと過ごす)が10日間、パソコン教室・音楽プログラム・地域清掃・地域散策・菓子作り・ワークショップなどプログラムが組まれている日が10日間ある。入り口には、4月5月のプログラムのお知らせ(左)が貼ってあった。

ところで、ここは1年前のオープンだが、「実際に利用したのは何人ぐらいでしたか?いちばん多い利用者は何歳ぐらいですか」と聞いてみた。

「去年1年間の本人の利用者は、男性が2800人、女性が560人です。見学者やご家族もいれると、もっと多くなります。利用者は20代半ばから30代半ばがほとんど。24歳から28歳が特に多いです」と末木さん。

「大学生になるとつまずく傾向が増えています。高校まではクラスのくくりがありますが、大学ではクラスのくくりが曖昧になるので孤立化しやすくなるのかもしれません」。

「未だに初めて来る方からは、今までどこに相談していいかわからなかったとか、プラザの存在を知らなかったなどの声を聞きます。また、ご家族から相談を受けているケースの多くは、ご本人が来ていない状況にあり、まだまだ多くの人に届いてないように思います」とユースプラザの利用を呼びかけている。

この居場所が社会にでる踏み台になり、アルバイトなどを始める人が少しずつ出てきている。「フルタイムで働くにはまだ難しかったり長続きしない人もいます。でも居場所をよりどころにして、みな頑張っています。働き始めた人が休みの日にここに来ることもあります。だんだん元気になっている人をみると励みになるし嬉しいです」とも語る。


 きたプラな日々

末木さんは「きたプラな日々」というブログを書いている。居場所の様子を知りたかったが、プライバシーにもかかわることなので、見学は遠慮した。その代わり、末木さんのブログから写真を貸してもらった。

活動の一端が分かると思う。詳しく知りたい方は、ぜひブログを読んでほしい。

お菓子作り 地域の清掃 ワークショップ
お菓子作り。この日はロールケーキを作った。 地域の清掃。拾ったゴミは分別している。 ワークショップ。これは人間の知恵の輪を作っている。
地域散策 ソーシャルスキルズトレーニング 講演会
「大塚・歳勝土遺跡公園」の散策。都筑区の歴史を知った1日。 SST(ソーシャルスキルズトレーニング)の講座でロールプレイをしている。 青葉区の講演会で北部ユースプラザの紹介をした。

訪問する前は、「ひきこもりの若者を県や市が支援する必要があるのだろうか」と、心の底では思っていた。でも訪問したことで考えが変わった。引きこもりを作り出したのは、社会にも問題がある。未就労者が増えれば、不安定要素も増す。その意味でこういう居場所の存在は重要だ。

ひとりでも多くの若者が社会に踏み出せるようにと願いながら、ユースプラザを後にした。
                                         (2011年4月訪問 HARUKO記)

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