外観都筑区佐江戸町600にあるパナソニック モバイルコミュニケーションズの本社・佐江戸事業場(左)を、2人で訪問してきた。

都筑区の最南端に位置し、そばを流れる鶴見川は、緑区との区界にもなっている。

緑産業道路をはさみ、北側にもパナソニック系列の会社があるが、PMC(パナソニックモバイルコミュニケーションズの略・以下PMCと記す)は、道路の南側にある。


説明松下電器グループと一員のPMCは、全社あげて、しかも社員の家族まで環境問題に熱心に取り組んでいると聞いた。環境に配慮している会社はたくさんあるが、環境先進企業をうたっている企業は、そうあるものではない。それを見聞きすることが、今回訪問の主な目的である。

PMC環境センター企画・法規チームのチームリーダー谷田さん・高橋洋介さん・高橋淳子さんが、資料を投影しての説明(左)と、現場の案内をしてくださった。


   前身は松下通信工業

松下電器は、1918(大正7)年に大阪で松下電気器具製作所として創業。23歳の松下幸之助・妻・義弟とのわずか3人でのスタートだった。

PMCの前身である松下通信工業は、1958(昭和33)年に、松下電器産業から産業用電子機器部門を分離・独立して創立された。1960年に横浜の綱島に本社工場を、1967年に佐江戸工場を展開。当時の佐江戸は、周囲に田畑が広がる農村地帯だったという。

携帯事業の拡大にともない、2003(平成15)年に本社も佐江戸に移し、社名もパナソニック モバイルコミュニケーションズに変更。社名を変えただけでなく、業務内容も、モバイルつまり移動通信分野(ケータイなど)にしぼられた。

PMC全体の従業員は2,700名。佐江戸だけで、2,200名が働いている。


  インフラから端末まで

ケータイは、生活のすみずみまで入り込んでいて、今やケータイなしの日々は考えられない。PMCでは、ケータイに関するすべて、インフラから端末までカバーしている。端末(ケータイのこと)はもちろん、無線基地局、通信速度を計測する計測機器の研究開発に日夜取り組んでいる。

ビエラケータイ主に、NTTドコモ向けの製品を作ってきたが、最近では、ソフトバンクやKDDI向けも作っている。

「PMCの強みは、パナソニックグループ全体の技術を使えることなんです。たとえば、VIERAというテレビの技術をケータイにも使っています。ビエラケータイって聞いたことあるでしょう?」と、谷田さんたちは、少し誇らしげだった。日本を代表するエレクトロニクスの会社ならではである。

ビエラケータイ FOMAP905iは、ワンセグケータイの中でも鮮明な大画面を搭載している。画面が横に開くケータイは珍しいが、「ヨコオープン」の実物(左)を見せてもらった。




 環境にやさしいケータイ

PMCが環境問題に真剣に取り組んでいることは、環境センターが置かれていることからもわかる。主製品のケータイも、非常に気を配って作っている。

○生態系への影響が心配される特定6化学物質(鉛・カドミウム・水銀・六価クロムなど)を使っていない
○ケータイ使用時の消費電力削減・生産過程での電力削減など、電力をおさえる努力をしている。
○リサイクル材料の活用(Recycle)・リユースに適した設計(Reuse)・素材の削減(Reduce)など、製品の3Rを心がけている。

エコレールマーク世界中に出回っているケータイは、膨大な数にのぼるだろう。特定化学物質を使わないことで、地球の環境負荷はかなり軽減されるはずだ。肌身はなさず持っている商品だけに、身体への影響も減るような気がする。

さらに、北海道や九州など500キロメートル以上の長距離輸送は、従来のトラックではなく、鉄道を使うようになった。携帯電話業界では初の「エコレールマーク」(左)を、2006年に取得。トラックから鉄道へ切り替えたことで、CO2の排出量が、およそ8分の1も減ったという。


”もったいない” 未来につなげる合い言葉

横浜市が2005年から、ごみの分別・減量化に取り組んでいることは、27回の「横浜市資源循環局訪問」で取り上げた。PMCは、分別開始の2005年から3年連続で横浜環境行動賞を受賞。分別優良事業所に認定されている。

分別優良事業所の認定は、工場内に資源分別置き場プリント基板置き場排出物の計量所があることからも納得できる。「価値ある資源を大切に!”もったいない”未来につなげる合い言葉」というポスターもあちこちに貼ってあった。

PMCとて、最初からこうだったわけではない。1996年に分別を始める前の写真を見せてもらったが、再利用できそうなものが、ゴミの山になっていた。それが今では、99.9%がリサイクルされている。

分別置き場 基板置き場 紙の計量
ガラス・金属・電池・プラスチック・線材・基板などの資源分別置き場。パソコンなどは解体している。 ケータイやパソコンの基板も、銅箔のついた基板・ついていない基板・実装基板と、細かく分別している。 紙も上質紙・新聞紙などに分別し、各課で出た紙を計量をする。計量することによって廃棄量の自覚を促すねらいもある。


共存の森

構内には、企業・行政・町内会が一体になって作った「共存の森」がある。都筑区役所は、木材チップ・レンガ・腐葉土を無償で提供し、町内会は花壇の整備を手伝っている。「共存の森」は、CO2の削減、工場周辺の美化、町内会との交流など、いろいろな利点をもたらしているのだ。


共存の森 ミミズ牧場 色づいたモミジ
「四季の花小道」と名付けられた一画には、季節の花が彩る。社員ばかりでなく町民の憩いの場。 雑草や落ち葉は、構内にある「ミミズ牧場」で処理。ゴミの減量になり、腐葉土は共存の森に使われる 訪問した12月10日、森のモミジはこんなにきれいだった。


ホタルが飛んだ!

「共存の森」の横を、江川というせせらぎが流れている。近くの都筑水再生センターから出る水を利用しているが、処理してあるので臭いもない清流だ。

2005年に発足した「佐江戸せせらぎ水辺愛護会」には、PMCの社員や町民など60名の会員がいる。定期的に掃除・草刈り・剪定をしてホタルが住む環境をボランティアで整備している。

せせらぎを整備した後に、ホタルの幼虫や餌になるカワニナを放流する。放流に参加する近所の子ども達は、幼虫が成虫になる日をワクワクした気持ちで待つにちがいない。

丸2年経った2007年6月には、ホタル鑑賞会が開かれ、300名が集まったという。目の前の産業道路には、車がひっきりなしに通っている。こんな所に無数の淡い光が点滅すると想像するだけで、嬉しくなってくる。2008年も鑑賞ができそうだ。ホタルが成虫になるのは、5月下旬から6月上旬だが、何月何日と予告は出来ない。間近になったらお知らせがあるはずだ。

蘇る水100選 ほたるの広場 魚が泣いてるよ!
この碑には、江川せせらぎが、建設大臣賞「蘇る水100選を受賞」と書いてある。 「ほたるの広場」の看板。せせらぎには、小さな魚がたくさん泳いでいた。 子ども達が描いたポスター。魚を捕ってはいけないことを「魚が泣いてるよ!」と軟らかく表現している。

環境保全の意識から「共存の森 四季の花小道」が生まれ、この活動から江川にホタルを飛ばす活動が生まれた。そしてホタルの飼育は、PMCの社員から近くの都田西小の子どもたちに受け継がれている。

カブト虫を育てる活動もはじまっている。佐江戸町内会の夏祭りなどで、子どもたちにプレゼントして大喜びされた。佐江戸町内での「環境フェスタ」にも、行政と環境NPO法人との共催で参加。他に、「クリーンアップ作戦」で通勤路の清掃もしている。

都筑区には、地域と交流している企業・環境に配慮している企業はたくさんあるが、PMCの取り組みは突出しているように思った。(2007年12月訪問 HARUKO記)

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