武蔵工大の横浜キャンパスには、100名(平成18年4月)の外国人留学生が、在籍しています。なぜこの大学で学ぶ気になったのか、どんな大学生活を送っているのか。4人の留学生から話を聞きました。

インタビューしたのは、アメリカ人・トルコ人・ミャンマー人・ネパール人。滞日年数も、日本語習得にかけた時間もそれぞれ違いますが、4人とも、日本語が驚くほど上手です。インタビューも、メールでのやりとりもスムーズにフレンドリーに進みました。

「日本に住んでいて嫌な思いをしたことがない、大学生活も非常に楽しい」と、全員が話してくれました。そうは言っても、日本の生活に馴染むまでには、かなりの努力が必要だったと思います。それを、まったく口にしない事に、拍手を送りたい気持ちです。彼らが、将来、どこの国で生活することになっても、武蔵工大で学んだことがプラスになり、日本との架け橋になってくれそうな気がしましました。
(2006年6月  HARUKO記)



都筑区茅ヶ崎公園の「生態園」で、学生(主に1年生)に環境教育プログラムの「エコシステモロジー」を指導しているアダムさん。
ロベルが姓、アダムが名であるが、名刺には「ロベル・アダム」となっていた。「日本で生活しているので、アメリカ式ではなく、日本人のように、姓を初めにしています」。この一言で、日本で学ぶ彼の姿勢がわかるような気がした。

アダムさんはアメリカのニューヨーク州出身。現在は横浜の菊名に住んでいる。

日本との関わりは、カリフォルニア州立大学バークレー校で仏教を学んだ事に始まる。在学中に奨学金を得て、福山大学に留学。その後、JET(The Japan Exchange and Teaching)プログラムの国際交流要員に採用され、長野県庁松本支所で、外国人と日本人のコミュニティ作りのために活動した。


松本で、人間と自然が共生する里山に出会ったことが、環境情報学部で学ぶきっかけになった。「里山は、環境教育のモデルにもなるし、経済的意義のある里山を復元したい」。彼は、熱っぽく語った。アメリカ人の彼に、日本の里山の素晴らしさを再認識させてもらった。

アダムさんは、博士課程前期の2年生。環境情報学科の小堀研究室に属している。小堀研究室は地域・日本・海外の生物多様性の保全や自然環境の保全を研究している。

「市民・学生を対象とした里山再生のための環境教育プログラムの開発と実践」が、彼の研究テーマ。「小堀先生は大好きです。先生に出会えて幸せだった」とロベルさんは話している。

博士課程前期を終えたら、持続可能な社会を目指すNGOやNPOの団体、もしくは環境問題を真剣に取り組んでいる企業で働きたいと思っている。



右から2番目がムスタファさん。学内の食堂で、留学生の仲間とのひととき。
ダルビッシュオールが姓、ムスタファが名。トルコではムスタファが先だが、パスポートには、ダルビッシュオールを先に書いているので、日本でもこの順序で表記している。

ムスタファさんはトルコのイスタンブール出身。現在は、川崎市新子安のアパートに、トルコ人友人と住んでいる。高校卒業後に来日し、日本語学校で1年半学び、推薦で武蔵工大に入学した。

現在4年生の彼は、環境情報学科の「中原研究室」に属している。。中原研究室は、持続可能な消費とライフスタイルに関する研究をしている。このままの消費を続けると地球は破滅するしかない。その解決策を多方面から考えている。

イスラム教徒でもあるムスタファさんは、「イスラム教と環境」が研究テーマである。イスラム教で精神の豊かさを得られる社会を目指している。「中原教授は、イスラム教にも造詣が深いので、研究室が楽しい」と語ってくれた。

宗教によって生きやすい社会を作りたいと願っているだけあり、イスラム教特有の、1日5回のお祈りも可能な限り欠かさない。ラマダン月の断食も守っている。

日本人は親切だし街も清潔だし居心地がいい。卒業後は、日本で仕事を見つけたいと思っている。

日本での生活は、経済的に楽ではない。生活費を補うために、週に2回ほど、東京のワシントンホテルのレストランで、ウェイターをしている。



右から3番目が、ラン・ム・ゾウさん。ミャンマー人や日本人の友人と、伊豆に遊びに行ったときの写真。年に2〜3回は、仲間と旅をしている。
「どれが姓で、どれが名なの」と真っ先に聞いた。「区別はないんです。父も母も僕とは関係ない名前です」ということだった。

首都ラングーンから飛行機で2時間ぐらい離れたダウェイの出身。今は東京の稲城長沼の寮に住んでいる。留学生に安く開放している寮だ。

高校卒業後、父が日本との仕事をしている関係で、東京の日本語学校へ。2年間日本語を学んだ後に、学校の推薦で武蔵工大に入学した。

ミャンマーでは、海外に留学する例は、まれである。アメリカ、シンガポール、イギリスへの留学は、日本への留学数より多いが、全体的には、わずかである。


情報研究科4年生のラン・ム・ゾウさんは、ロベルさんと同じ、小堀研究室に属している。小堀研究室はロベルさんの項でも書いたが、生物と環境の保全を研究している。

ラン・ム・ゾウさんの研究テーマは、「微生物や藻類からみた川の評価」である。


信じている宗教は仏教。部屋に小さい仏像を飾ってあり、寝る前は10分ほど祈る。「眠いときや酒を飲んだりしたときは、しないこともあるけど」と笑っていた。

来年は大学院に進み、更に研究生活を続けるつもりだ。将来は、ミャンマーの大学の先生を目指している。

ムスタファさん同様、経済的に苦しいので、土日は一日中、渋谷のコンビニでアルバイトをしている



教壇の右側に立っているのが、アニタさん。ネパールの小学校の「環境教育プログラム」のなかで、ゴミ分別の大切さを指導している。
アニタが名、カンデルが姓である。ネパールではアニタ・カンデルと記すが、アダムさんやムスタファさん同様、日本の習慣に従っている。

両親の住まいは、ネパールの首都カトマンズ。現在は横浜市鶴見の国際留学生会館に入居している。入居費も安いし、奨学金をもらっているので、恵まれている。

兄が日本に7年間留学していたので、日本に来る気になった。高校卒業後、日本語学校で2年間勉強し、ITを学ぶ目的で、この大学に入った。

彼女は情報メディア科の2年生。プログラミングやコンピュータシステムの基礎、マネジメントや社会学を学んでいる。「IT設備が整っていて、いつでも使えるから、満足しています」。彼女の言葉の端々から、学ぶ楽しさが伝わってきた。


2年生のアニタさんは研究室には属していないが、ブレンダブッシェル研究室と深い関わりを持っている。ブレンダ研究室は、外国の環境教育の有効性について研究している。ネパールには毎年訪問して、小中学校で、特別環境プログラムを行っている。

アニタさんは、里帰りもかねて、1年の時から、このネパールプロジェクトに参加している。ブレンダ先生がカナダ人なので、ブレンダ研究室では、英語でのコミュニケーションが不可欠。でもアニタさんは、英語しか使えない学校に通っていたので、英語は得意だ。

ネパールの宗教はヒンズー教だが、ほとんどの人は仏教も信じている。アニタさんも、部屋に仏像とヒンズー教の神を並べておいてある。

卒業後は、英語圏の大学院で、更に学びたいと思っている。

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