いであ株式会社・国土環境研究所環境と建設のコンサルタントを主業務とする「いであ株式会社」に行ってきた。今年・2006年6月に、「国土環境」と「日本建設コンサルタント」が合併し、新社名「いであ」としてスタートしたばかりだ。

取材風景本社は東京都世田谷区にあるが、訪問したのは都筑区早渕2丁目にある「国土環境研究所」(左)。

この研究所は旧・国土環境株式会社が1995年に、「環境情報研究所」として開設し、今年の合併で「国土環境研究所」と改名した。ほぼ10年前から、区民にはお馴染みの会社である。

レポーターは男性1名、女性2名。管理部の山本さんが会社の概要を説明してくださった(右上)。


民間初の天気予報の会社

屋上に設置された気象観測の機器国土環境は、1968(昭和43)年に「トウジョウ・ウェザー・サービスセンター」を設立したことに始まる。天気予報は気象庁が一手に引き受けていたが、民間で初めて天気を予報する会社が、誕生したのだ。「ヤン坊マー坊天気予報」の担当をしていたこともある。

「いであ」の現在の主業務は総合コンサルタントで、天気予報が占める割合は少ない。しかし、1階ロビーには、お天気相談コーナーや、気象観測装置が設置され、前身が天気予報の会社だったことが分かる。1階ロビーには、この他に図書コーナーもあり、自由に出入りできる。環境や天気に関する図書が充実している。


気象観測装置屋上に設置された計測器(左上)で得られた情報が、即、ロビーの気象観測装置(左)に、数値として表れる。訪問した日時・10月17日の11時半頃の数値である。快適な日よりだった。

当たり前だが、風速も風向きも気温も湿度も気圧も、刻々と変化し、見ている間に数値が動く。



プロ野球球団とも契約

天気予報のデータ区役所からもイベントの前に、天気について問い合わせがある。スポーツや屋外でのイベントの場合は、空模様による影響が大きいからだ。

「いであ」は、某プロ球団と契約を結んでいる。冷たいビールが売れる日もあれば、暖かい飲み物が売れる日もある。天気は、出入り業者の仕入れにも関係する。

試合途中で雨が降ってきた場合、中止にするか中断するかの判断材料も提供しなければならない。だから、この球団の試合がある日は、5回終了までは、次々に入る気象情報から目が離せない。

気象予報士でもあるバイオクリマ事業部の小山さん(左上)が、「このようにして天気を判断します」と、膨大な資料を前に、説明してくださった。


個人設定もできる天気予報

「いであ」では、気象情報や健康気象情報・「Weather Information Service」を公開している。バイオクリマ事業部の宮下さんは、「当社の予報は、一般の人はもちろん、事業者や研究者にも利用されています。アクセス数も多いんですよ」と、クリックしながらサイトを見せて下さった。

一般的な予報以外に、実況天気図、雨レーダー、警報・注意報の発令状況、予想気圧配置も表示している。実況天気図は3時間おきに更新され、速報性にも優れている。天気図を多少でも読める人は、自分で予測することも可能だ。

「お天気ライブカメラ」で、都筑区を含め全国10ヶ所の様子をライブで見ることも出来る。画像は、10分おきに更新。

健康予報特に、バイオウェザー予報(健康予報)は、ユニークだ。健康予報の11項目、生活予報の8項目から関心のある3項目を選び、個人設定すると。予報が絵で表示される(左)。

この場合は、紫外線・熱中症・洗濯の3項目を選んでいるが、冬には、インフルエンザやぜんそくといった項目を選ぶともできる。

天気に関するコラムやエッセイ、旬の食材を使った健康レシピも充実している。アクセス数が多いのも、納得できる。



環境への関心の高まり

1968年に公害対策基本法が施行されたことから、環境コンサルタント業務も手がけるようになった。特に、東京湾の富栄養化が問題になった1970年代から、1都3県の自治体が、東京湾の総合調査をすることになった。環境コンサルタント数社が、大気・土・海・川を検査して、結果が思わしくない場合は、具体的な改善提言している。

河川の調査環境への関心の高まりに比例して、環境コンサルタントの業務は多岐にわたるようになった。

静岡県大井川町に、「環境創造研究所」という似たような名前の研究所がある。海水・淡水を利用して生物・化学実験や分析を行い、環境のメカニズムを把握しようと試みている。主にハード面を担当する研究所。

ここ「環境情報研究所」は、河岸構造と水生生物の調査(左)なども行っているが、主に、環境に関するデータベースの構築やモデル開発、予測・評価といったソフト面を担当している。

川や海の水がどのように拡散するかといったことも、パソコンで予測できる。川や海で遭難した人がどの辺りに流れ着くかの予測が出来るので、探索する場合の目処になる。日航機が御巣鷹山に墜落した時には、相模湾の海上に落ちた尾翼が、どのあたりにあるかの問いあわせもあった。

石油の流出がどこまで広がるかの予測を、依頼されることもある。海上に発電所を建設する場合、事前と事後に調査をして、環境影響評価を行うこともある。


つづき博士として小中学生を指導

つづき博士都筑区には、「つづき博士倶楽部」という制度がある。優れた技術や人材を備えた企業に、小中学校教育に一役買ってもらおうのねらいだ。現在、約20社が登録しているが、「いであ」もその1社。

昨年2005年には、7月に折本小学校で「横浜の川と海の魚」、7月に中川小学校で「気象の観測・天気図の作成」、10月に折本小学校で「鳥のしくみとくらし」、12月に北山田小学校で同じく「鳥のしくみとくらし」の講義を行った。

交流ステーションの「区民レポーターが行く」のコーナー「魚博士がやってきた!」で、折本小での「横浜の川と海の魚」の講義の様子を取材している。子ども達が好奇心で輝き、生き生きしている。

上の写真は、「気象の観測」の授業(2002年茅ヶ崎中学)後、生徒の質問に答えている「つづき博士」。


地球の地軸


空の輪水の星研究所には、地球・自然・情報をテーマにしたアートがある。丸みのあるビルも、地球をイメージして作られた。

庭に設置された「空の輪」というモニュメント(左)は、メビウスの輪が大空に向かって地軸に沿って伸びていることを表している。地球の回転軸と同じ、23.5度傾いている。

玄関前には「水の星」というレリーフ(右上)がある。海と情報の流れである風をテーマにしている。

両方とも、トキワ松学園横浜美術短期大学・総合造形研究室の、春山文典氏と加藤寿彦氏の作。

(2006年10月訪問 HARUKO記)



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